研究課題/領域番号 |
19K03939
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
坪井 昌人 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 専任教授 (10202186)
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研究分担者 |
三好 真 国立天文台, JASMINEプロジェクト, 助教 (50270450)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 銀河系中心 / 銀河中心ブラックホール / 中間質量ブラックホール / 位置天文学観測 / 大質量星 / 星形成 |
研究実績の概要 |
Atacama Large Millimeter/Submillimetr Array (ALMA)を用いたSgrA*周囲の天体の位置天文観測により銀河系中心にSgrA*に相当する巨大ブラックホール以外にブラックホールが存在するのか否かを探るのがこの研究の主題である。2回のALMAによる観測でSgrA*周囲の天体の固有運動が求まるが、この研究は固有運動の方向変化を利用して2個目のブラックホールの存在を探査するので原理的に3回の観測が必要である。 今年は1、2回目の位置天文観測を解析してSgrA*周囲の天体約65個の固有運動を求めた。ここの天体の位置決定精度は0.001"程度である。これはサブミリ波の位置天文学では最初の成果である。天体の運動は少数の例外を除きそれぞれグループになりながらSgrA*の周囲をケプラー運動していた。また固有運動が特にそろった星団(comoving cluster)も確認できた。これらの結果は先行する赤外線観測と矛盾なくかつより高精度な観測となっていた。ALMAの位置天文学観測装置としても高性能を証明した。これらの研究結果を日本天文学会欧文誌(PASJ)に投稿した(論文acceptは4月11日)。またこれらSgrA*周囲の天体の起源の研究の一部としてこの領域でのホットコアの研究も行った。この結果はPASJで出版した。 最終年度は3回目の位置天文観測を解析してSgrA*周囲の天体の固有運動を求めて、固有運動の方向変化を調べることを予定している。また初年度に発見したブラックホール候補天体の周囲に回転するガスリングについてもピークの位置変化と視線速度の複合解析を行い中心天体の質量を推定したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2回のALMAによる観測でSgrA*周囲の天体の固有運動が求まるが、この研究は固有運動の方向変化を利用して2個目のブラックホールの存在を探査するので原理的に少なくとも3回の観測が必要である。 今年度までに2回の位置天文観測を解析してSgrA*周囲の天体約65個の固有運動を求め、ALMAの位置天文学観測装置としても高性能を証明した。また初年度にはブラックホール候補天体の精密観測を行いその周囲に回転するガスリングを発見してその結果の出版もしている。 ここまでは概ね順調であったが、COVID19のためALMAが1シーズン観測が止まったため、3回目の観測データが本当にこの研究終了までに間に合うかは微妙になってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
ALMAの位置天文学観測装置としても高性能を証明した。最終年度は3回目の位置天文観測を解析してSgrA*周囲の天体の固有運動を求めて、固有運動の方向変化を調べることを予定している。また初年度に発見したブラックホール候補天体の周囲に回転するガスリングについてもピークの位置変化と視線速度の複合解析を行い中心天体の質量を推定したい。 COVID19のためALMAが1シーズン観測が止まったため、3回目の観測データが本当にこの研究終了までに間に合うかは微妙になってしまったが、これは研究方法の原理的な問題ではなく、単なる観測時期的な問題であるので最終的に間に合わない場合は研究期間を延長して対処したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID19のためIAU総会は延期になった。データ到着の遅れにより論文の投稿が遅れ結果として採択が4月(acceptは4月11日)になり出版が年度中にできなかった。今年度はまずこの論文の論文出版をする。 次に3回目の位置天文観測を解析してSgrA*周囲の天体の固有運動を求めて、固有運動の方向変化を調べること、また初年度に発見したブラックホール候補天体の周囲に回転するガスリングについてもピークの位置変化と視線速度の複合解析を行い中心天体の質量を推定することを含む論文出版をする予定である。
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