| 研究課題/領域番号 |
19K03974
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| 研究機関 | 京都大学 |
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研究代表者 |
秋友 和典 京都大学, 理学研究科, 教授 (10222530)
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| 研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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| キーワード | 地球規模海洋循環 / 非線形状態方程式 / 水温の南北非対称分布 |
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| 研究実績の概要 |
前年度の実験で用いた大西洋海盆に太平洋を模した海盆を繋いだ二海盆モデルを構築して実験を行った。現実を理想化した風応力場の東西成分を両海盆に同じように与えた。また、大西洋では、海面密度分布は南北対称だが、水温、塩分はともに北半球のほうが南半球よりも高いという状況を想定したのに対し、太平洋では水温を南北対称、塩分を北半球で低い設定とした。これらも現実にみられる水温、塩分分布を理想化したものである。その他のモデル設定、条件は前年度と同じものとし、大西洋の南北水温差dT（塩分差dS）を変えてケーススタディを行った。比較のため太平洋だけの単実験も行った。この実験では非線形状態方程式の影響で南極大陸周辺から沈み込む底層水が低温化するという特徴が見られた。
二海盆実験で見られる特徴は大きくふたつある。まず、単海盆実験に比べて北大西洋で沈み込む深層循環がより強化されて南まで延び、太平洋では南極大陸周辺から沈む底層循環が強化されることが確認された。これらの特徴は大西洋における水温、塩分分布が南北対称であるか否かによらず見られたことから、単海盆と二海盆の違いがもたらす効果であることが分かった。
また、単海盆実験で見られた dT（dS）の増加に伴う特徴は二海盆実験でも見られた。すなわち、大西洋の底層循環はdTの増加とともに強化され、底層水が増加するのに対し、深層循環と深層水形成量は減少する。一方、太平洋では底層循環の北伸と強度が弱まった。注目すべきは大西洋における水温分布の南北非対称性が上記の二海盆化がもたらす効果とは逆に働くことであり、地球規模での海水循環と底・深層水形成に複雑な要素を付加するものとして興味深い結果である。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の単海盆実験の結果を踏まえ、大西洋に太平洋をつないだ二海盆実験を行ない新たで重要な成果を得た。すなわち、熱塩的な境界条件が異なるふたつの海盆（大西洋、太平洋）に生じる循環システムや底・深層水分布は海盆連結の影響を受けた変化を示すこと、その変化は大西洋における水温の南北非対称分布が生む変化とは逆に働くことである。これらの性質が地球規模循環や底・深層水形成を複雑化する要因として働く可能性が明らかになったことは意義深く、研究は順調に進展している。
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| 今後の研究の推進方策 |
令和２年度は研究がおおむね順調に進行し、引き続き実験の遂行、結果の解析と考察を行う予定である。なかでも、キーとなる海域である南大洋における風応力の変化が全球循環や底・深層水形成にどのような影響を与えるのかについて、これまでの成果を踏まえた検討を加えていく。また、最終年度として成果の取りまとめと公表を行う。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイル感染症の蔓延に伴って学会等の旅費を使用しなかった、外部記憶装置（ハードディスク等）の価格が低下した、および実験・解析補助が不要となったことにより次年度使用額が発生した。次年度は成果の取りまとめに向けた追加・予備実験のための計算機使用を拡充する予定である。
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