研究課題/領域番号 |
19K04034
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
綿田 辰吾 東京大学, 地震研究所, 准教授 (30301112)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 火山性津波 / 長周期地震波 / 山体崩壊 / 海底カルデラ / 火山性地震津波 |
研究実績の概要 |
2018年12月アナク・クラカトア火山の山体崩壊による土砂の海中突入により,スンダ海峡周辺に津波が発生した.山体崩壊現象はインドネシア国内のみならず,アジア・オセアニア地域で周期20-100秒の地震波として記録された.地震波は津波被害が発生する20-30分前に記録されており,山体崩壊のような巨大地滑りが引き起こす津波警報が,長周期地震波の迅速な解析から可能となること示唆している. 2015年5月に発生した鳥島近海地震(M5.7)と小さいが,東南海地域で広範囲に津波が観測された.津波波形・地震波形の同時インバージョンから,地震発生時にはカルデラ底がその下部で水平に広がるマグマの増圧により傾斜運動を起し,カルデラ壁に沿って跳ね上げ運動起していることが判明した.カルデラ浅部の複合断層運動による地震波発生効率が低下と、スミスカルデラ付近で発生するCLVD型の火山性津波地震の成因が明らかとなった. 2018年9月にインドネシア・パル湾付近を震源とする横ずれ型地震(M7.5)が発生し,湾奥に位置するパル沿岸に被害が集中した.InSAR画像と遠地地震波形解析によると,湾内を通るパル・コロ断層の横ずれ運動に加え縦ずれ運動により湾内で津波が発生したと考えられる.パル湾沿い浸水高を説明するには断層運動起源の津波に加え,湾内海底の液状化や地滑りがあったことが示唆される. 2005年3月にスマトラ島のインド洋沖合で発生したニアス地震(M8.6)は,2004年12月に発生したスマトラ・アンダマン地震(M9.1)の最大余震であった.最大津波波高は4m 程度で海溝型巨大地震にも関わらず津波被害が比較的小さかった.インド洋全域の検潮記録を用いて断層運動分布を求めたところ.大きな滑りは,スマトラ島下部に沈み込む深さ20キロより深いインド洋プレート上に集中し、そのため津波被害が比較的小さかったと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過去に発生した遠い津波記録を利用した巨大地震の再解析は,2005年3月にスマトラ島のインド洋沖合で発生したニアス地震(M8.6)を進め、現在論文に投稿中である.2018年12月に発生したスンダ海峡津波の論文は現在投稿中である.さらに、2018年9月に発生したインドネシア・パル地震の論文を投稿中である
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今後の研究の推進方策 |
2018年12月に発生したスンダ海峡津波を発生原因となったアナク・クラカトア火山の山体崩壊の論文を準備しつつある。今年度は2004年12月に発生したスマトラ地震(M9.1)津波の再解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年末に発生したインドネシアで発生したスンダ海峡津波とパル地震津波の解析を優先した。過去の津波記録を用いた巨大地震の研究は2005年のニアス地震津波について行ったのみであった。2020年度は2004年のスマトラ地震津波の再解析もをすすめ、論文化する。また、紙記録として残っている津波記録の数値化をする機材を取り揃えて解析を進める。
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