研究課題
前年度までの研究から,FSWによるADC12/S45C接合体の場合は,攪拌領域内では,ADC12に含まれる針状のSi粒子が,攪拌されて砕かれ,微細な粒状のSi粒子となり,疲労破壊が,両者の境界近傍で発生することが明らかになっている。最終年度の研究では,主に,疲労破壊の起点となる両者の境界を排除するため,攪拌領域を拡張したADC12/S45C接合体作製し,その疲労強度特性について検討した。その結果,FSWによる接合後に,攪拌領域を拡張させた試料では,これまで発現しなかった,接合界面での疲労破壊が生じ,強度も低下する結果となった。これは,接合時に,界面に適量生成され,接合効果を生む化合物層が,攪拌領域を拡張させる際に発生する熱の影響で,過度に成長してしまった結果であることがわかった。そこで,攪拌領域拡張時に発生する熱が,接合界面の化合物層に影響を与えないようにするため,あらかじめ,攪拌領域を拡張させたADC12を作製し,その試料とS45CをFSWにより接合し疲労強度特性の検討を行った。その際,攪拌領域の拡張方向が,応力負荷方向に垂直なものと,平行なものを用意して検討したが,いずれの疲労強度も,大幅に低下する結果となった。疲労破壊の発生箇所は,攪拌領域を拡張する際に生じた,Si粒子の密度が異なる領域どうしの境界,もしくは,攪拌領域を拡張させた領域と,接合時の攪拌領域との境界で発生していた。本研究では,研究期間全般を通して,主に,FSWによる,ADC12/S45C接合体,A6063/S45C接合体の疲労強度特性と,疲労破壊のメカニズムの検討を行った。結果的には,いずれの接合体においても,攪拌領域と母材等の境界,すなわち,微視組織が変化する境界と位置づけられる領域が,最も弱い箇所となり,そこで,疲労破壊が発生すること等を明らかにした。
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The Proceedings of Mechanical Engineering Congress, Japan
巻: 2023 ページ: S042~08
10.1299/jsmemecj.2023.S042-08