研究課題
基盤研究(C)
スギ・ヒノキの複層林で得られた水文観測データを基に、単層林を複層林に変更した場合の洪水流出シミュレーションを行った。具体的には樹冠部の遮断蒸発能の改善、地表面の粗度係数の改善の効果を考察した。植生転換したスギ・ヒノキ小流域では約15%の洪水ピーク流量低減を見込めると推定された。30年間の森林施業量を勘案して、大流域20%程度を複層林化した場合、2%程度の洪水低減効果しか得られないと推察された。
水文学
森林の洪水低減機能の中心は森林土壌にあり、その浸透能・保水能が寄与していると考えられている。本研究では樹冠の遮断蒸発と地表面の地表面流貯留に注目し、複層林という手段でこれらの能力を高めたときの洪水ピーク流量の低減効果についてシミュレーションを行った。森林土壌の浸透能・保水能向上に関わる土壌層の増加は100年単位の時間が必要であるが、複層林化による遮断蒸発能、地表面流貯留能の増強は数十年(河川整備計画を視野に入れて30年程度)で実現可能である。