研究課題/領域番号 |
19K04736
|
研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
西川 豊宏 工学院大学, 建築学部(公私立大学の部局等), 教授 (80594069)
|
研究分担者 |
中野 民雄 静岡文化芸術大学, デザイン学部, 准教授 (00610578)
小瀬 博之 東洋大学, 総合情報学部, 教授 (20302961)
笠井 利浩 福井工業大学, 環境情報学部, 教授 (60279396)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 雨水利用 / 水循環 / 給水原単位 / ゼロウォータービル / あまみず / ライフライン / LCP・BCP / 実態調査 |
研究実績の概要 |
本研究は、都市建築における持続可能な水インフラを実現するために、給水原単位の実態調査と将来動向(課題1)、雨水利用建築の省資源性能(課題2)、局地的豪雨や長雨、巨大地震における上下水ライフラインの面的対応(課題3)という3課題を設け、活動推進している。各課題の研究実績の概要は以下の通り。 (課題1)立地や規模等の特性が異なる実運用される事務所3件を対象とした管理記録のデータ分析を行い、使用水量の実態や給水原単位の動向を調査した。この調査から節水器具の普及による使用水量の減少傾向を確認するとともに、器具使用回数の推定や建物活動量とを連関させる必要性が導出され、次年度以降の課題とした。 (課題2)日本建築学会「あまみず普及小委員会(主査:笠井利浩)」では、建築における雨水活用の技術開発の他、環境教育や各種メディアを通じた広報・啓蒙活動により本格的なあまみず活用の普及を目指している。水循環の健全化に寄与すべく推進された具体的な研究活動として、全生活用水を雨水に依存する赤島の水利用実態と意識調査が行われた。 (課題3)日本建築学会「給排水設備の災害レジリエンス調査小委員会(主査:西川豊宏)」では、水供給と水処理にかかわる建築設備ライフラインの自然災害による過去の被害事例を調査し、現状の災害対策の事例調査、水供給等の地域別ポテンシャルの情報を収集している。課題3で得られた独自の調査結果や分析内容は同小委員会へ積極的に情報提供されて、情報の外部発信の場として第44回水環境シンポジウム「自然災害によるライフライン途絶時に求められる建築設備機能について考える」を企画実施(2019年5月24日:建築会館)した。 これら各課題の研究成果は、日本建築学会、空気調和・衛生工学会、日本雨水資源化システム学会等の年次大会で口頭発表された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画に沿った進捗状況である。研究成果の外部発信も各課題ともバランスよく実施されており、次年度以降も同等の活動量を継続する予定である。 (課題1)給水原単位の実態調査と将来動向の予想については、複数の事務所ビルの管理記録やBEMSデータを入手し、水使用特性の把握と給水原単位の動向調査を行った。概ね計画通りの進捗であり、次年度以降は研究成果の外部発信を推進する。 (課題2)計画の通り実施した赤島の水利用実態と意識調査に加え、雨水利用建築の省資源性能を定量的に評価するため、日本建築学会「ゼロウォータービルディング評価手法検討小委員会(主査:小瀬博之)」での活動を軸にゼロウォータービルに関する情報収集を行い、海外事例や環境評価指標における評価概念について調査を進める。なお、次年度(2020年度)において日本建築学会大会においてオーガナイズドセッションを企画し、広く論文投稿と議論の場を設けた。 (課題3)計画通りの研究推進が成されており、課題1での知見から国内で観測された代表的な集中豪雨や長雨での降水データを用いた雨水貯留槽の水位予測法の策定に発展した。次年度以降は研究成果の外部発信を推進する。 以上の研究実績として今年度の研究成果の外部発信は、雑誌等への寄稿6件、国際学会投稿論文が1件、国内学会口頭発表論文(査読無)が13件(日本建築学会大会、空気調和衛生工学会学術講演会、日本雨水資源化システム学会研究発表会など)、学会賞受賞講演(空気調和・衛生工学会)1件、シンポジウム(建築学会)企画開催1件、学術見学会(給排水設備研究会)企画開催2件であった。なお、大学院修士学生1名、学部卒業研究生1名が当研究課題に関連して学位授与され、同修士学生が空気調和・衛生工学会において篠原記念賞奨励賞ならびに学術論文講演会(年次大会)若手優秀発表賞を受賞するなど、教育面での活動成果も得られた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、研究成果と持続可能な開発目標(SDGs)に掲げられる水・衛生(目標6)、インフラ、産業化、イノベーション(目標9)、持続可能な都市」(目標11)、気候変動(目標13)の4つの目標と関連性を意識しながら、課題推進する予定である。 具体的には、次年度において実態調査から得られた節水器具による水使用量の経年変化の知見を活用し、雨水利用建築の省資源性のみならず、雨水活用設備の設計の最適化に寄与する基礎資料の策定に発展し、課題1と2の連携を進める。また、建築事例に基づいた省資源性を実測データから評価し、上下インフラに与える環境貢献度と自然災害時への強靭性や持続性について考察することで課題2と3の連携を検討する。 このようなアプローチにより計画通りの研究成果が得られた場合、研究最終年度において大規模災害時の水インフラのあるべき姿を過去の被害事例や対策、効果検証から効率的で即効性のある方法論提言へ発展したいと考えている。 なお、研究初年度(2019年度)において、集中豪雨や長雨など想定外の降雨が国内各地で観測されており、激甚化する降水特性への対応策についても研究活動の中で柔軟に取り込んでいく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大防止により2020年1月から3月に予定した国内旅費執行が取りやめになったことから次年度使用額が生じた。 感染拡大の動向は次年度以降も不透明であるが、効果的な研究会合の計画やWEB会議の実施を心がけ、これに関係する費用として適切に旅費あるいはWEB会議対応の物品購入に充当する予定である。
|