研究課題
基盤研究(C)
禁裏の祭祀空間として主に黒戸御所、大嘗宮、御願寺に着目して研究を進め、天皇の近くに仏を対象とした祭祀の空間が形成・維持されてきたことや、禁裏のなかに一時的な祭祀空間を確保するために御願寺が一定の役割を果たしたことなどを明らかにした。また、祭祀空間が確保される際には公家町が重要な役割を果たしていたことを確認した上で、特に神事祭祀が実施される際には禁裏を中心に同じ性格あるいは思想を共有した人々で構成される空間である「禁域」が表出したことなどを指摘した。
日本建築史
本研究では、禁裏で行われる祭祀は、禁裏の内の空間だけでなく禁裏の外、すなわち京都にある御願寺などが一定の役割を果たすことで成立していたことを明らかにできた。これは、祭祀の執行を重視する近世の天皇・朝廷は幕府以外の外との関係の構築がなくては成り立たないことを意味しており、これまでの朝幕関係論を中心とした近世朝廷史研究に新たな視座を提示するものであると考える。