本研究は、試合中の選手の細かな動きに関する時系列データから深層学習の技術を用いて特徴量を抽出し、指導者の経験などによる評価と比較することで、新たな視点での選手評価の特徴量を見出す可能性を探索すると共に、その有用性を検討することが目的であった。対象競技はサッカー、ハンドボール、バスケットボール、バレーボールであったが、新型コロナウィルス感染症の影響もあり、サッカーのデータのみの取得となった。順天堂大学女子蹴球部所属選手に、サンプリング周波数が100Hzの慣性センサを搭載したウェアラブルデバイスを装着し、試合中の3軸方向別の加速度を計測した。計測された加速度データを3秒ごとに区切り、高速フーリエ変換することで周波数領域にて選手の動きを可視化した。可視化されたグラフを、深層学習におけるInvariant Information Clustering(IIC)の手法を用いて教師なし学習を行い、IICの層数やノード数などを調整して予測精度の高いモデルの探索を行いつつ選手の動きを分類した。クラスター分析を用いた統計学的な分類とIICの結果とを比較し、ほぼ似たような分類が得られることが判明した。試合中における選手の動きの分類についてはビデオカメラによる映像との照合も行い、FFTの結果と実際のプレーとの関連も一部特定できた。なお、動きの分類には鉛直方向の加速度が大きく影響していることや、試合での各種の動きの頻度分布から選手ごとのプレーのプロファイルが把握できることが確かめられた。これらは新たな視点での選手評価の特徴量といえ、試合中での選手の動きの定量的な評価として指導現場にて活用できる可能性がある。なお、研究結果については、MathSport Internationalや日本オペレーションズ・リサーチ学会にて口頭発表を行うとともに、論文としても投稿している。
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