本研究では開発途上国で簡易的な海岸保全対策として一般的に使われている木杭の消波工を対象として取り上げ,適正技術として科学的な効果を有するか検証するため,様々な研究に取り組んだ。研究期間の大半が新型コロナウィルスの蔓延期に重なり,海外現地調査については行うことはできなかったが,過去にベトナム・ファンティエットやその他の海岸において行った調査結果を活用し,現地の木杭を模擬した上で詳細な数値流体解析や実験水槽において木杭を配置した造波実験を行い,木杭の消波効果について科学的な理解を深めることができた。研究成果は,いくつかの国際学術誌を通じて世界に向けて発表することができた。例えば,木杭による波浪の遡上抑制効果や海岸浸食軽減効果に関する成果をJournal of Coastal Conservation誌,ダムブレイク実験を行い,作用波圧の統計的なばらつきをもたらす要因に関して詳しく分析した研究成果をJournal of Marine Science and Engineering誌,木杭が設置される極浅海域の台風時における波浪作用や潮位が及ぼす影響に関する成果をNature-based Solution誌に,各々研究成果を発表することができた。最終年度には,木杭の配列数や間隔,サイズなど木杭の設置に関する様々な変数,入射波高・遡上流速など波浪に関する変数と,被説明変数である木杭背後の津波の遡上高の間の統計的な相関を調べるための研究を行った。本研究の研究期間終了後も,継続してさらなる研究を進める予定である。
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