研究課題/領域番号 |
19K05171
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
根来 誠司 兵庫県立大学, 工学研究科, 特任教授(名誉教授) (90156159)
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研究分担者 |
武尾 正弘 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (40236443)
加藤 太一郎 鹿児島大学, 理工学域理学系, 助教 (60423901)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ナイロン / 耐熱性酵素 / 結晶構造解析 |
研究実績の概要 |
ナイロン加水分解酵素(NylC)の安定化機構とサブユニット会合について以下の検討を実施した。同酵素は、6-アミノヘキサン酸オリゴマーのみならず、ポリアミドPA6、PA66、PA4をエンド型で加水分解する。本酵素はN末端求核性ファミリーに属し、前駆体として発現後、Asn266 / Thr267間で分断されて活性化酵素となる。本酵素は同一モノマー4分子(モノマーA~D)が会合したテトラマー構造を有するが、サブユニット界面の置換により、熱変性Tm値が41~88℃まで変化する。耐熱性が最も高いGYAQ変異酵素に新たにランダム変異を導入すると、1. 自己分断されず前駆体で止まる、2. 凝集する、3. 細胞内で自己消化される等、変異体の多く(約80%)が影響を受けるという現象を見いだした。上記の変異体(凝集・自己消化型)では生化学的検討が困難であるが、分子動力学(MD)シミュレーションは効果的な検証法である。特に、適切なサブユニット会合と凝集への方向性、培養温度(30℃)でフラグメント化する要因について、結晶構造を基に変異酵素の座標データを作成後、MDシミュレーションを行う。この結果を基に、NylCの安定化に寄与する相互作用、適切な分子会合の要件を予測し、さらに、着目部位について、変異を導入し、生化学的検討から実証した。ナイロンはエチレングリコール(EG)に溶解するため、リサイクル工程で用いられている。この点に着目し、EG中、及び、EG/水混合系で、細胞抽出液レベルで検討を行ったところ、高濃度EG中でも活性を保持する変異体(A型)、EG中では殆ど活性を示さない変異体(C型)、両者の中間的な特徴を有する変異体(B型)に分類できることが分かった。そこで、代表的な変異酵素を精製後、EG中の構造変化(円二色性CD)と活性との関連性を検討するした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナイロン分解酵素NylCは大腸菌にクローニングされているが、発現量が少なく、再現性よく十分量の酵素の取得が困難という問題があった。そのため、今年度は、同酵素のアミノ末端領域にヒスチジンタグを付加した酵素を遺伝子工学的手法で調製し、迅速かつ再現性が優れた酵素発現、および、精製手法についての検討を実施した。その結果、効率的に酵素を取得する方法論を確立することができた。従って、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
ナイロン分解酵素NylCにヒスチジンタグを付加した酵素について、熱安定を検討する。さらに、代表的な変異酵素を精製後、エチレングリコール(EG)中の構造変化(円二色性CD)と活性との関連性を検討する。耐熱性が高く、かつ、EG中で高活性を示す酵素は、溶液状態でナイロン分解の酵素反応が可能となり、画期的な反応系になると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
本科研費の交付決定後に、新規でJSTのA-STEP(2019~2020年度)に採択された。そのため、本科研費で当初購入予定で計上した備品費、および、出張旅費(国内)の使用において、残額を生じた。さらに、2021年度、または、2022年度に国際会議出席のための外国旅費を確保することが必要になった。そのため、本科研費の余剰額を外国旅費に充当する。
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