研究課題/領域番号 |
19K05171
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
根来 誠司 兵庫県立大学, 工学研究科, 特任教授(名誉教授) (90156159)
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研究分担者 |
武尾 正弘 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (40236443)
加藤 太一郎 鹿児島大学, 理工学域理学系, 准教授 (60423901)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ナイロン分解酵素 / ケミカルリサイクル / ポリアミド / 表面加工 |
研究実績の概要 |
酵素的ナイロン分解の研究は,現在までにナイロン-6 やナイロン-6,6をはじめとする各種脂肪族ナイロンの高効率的な加水分解を達成するに至っている。その研究の中心に据えられているのは Arthrobactor sp. KI72株由来のナイロン加水分解酵素,特にエキソ型加水分解酵素NylBと,エンド型加水分解酵素NylCの2種類である。PETの酵素的加水分解に関する研究が商業的展開に向けて進展しているが,ナイロン分解系も工業的なケミカルリサイクルシステムに適用できる高い可能性を秘めている。高温や高圧を必要とする化学的手法と比較しても,酵素反応は室温程度の温和な条件下で反応を行うことができ,環境面,エネルギー面からも優位性が高い。ナイロンモノマーを他の有用物質に変換することも可能になっている。例えば,KI72株のゲノム解析から得られた 6-アミノヘキサン酸(Ahx)代謝に関わる酵素 NylDとNylEの組み合わせにより,Ahxからアジピン酸への変換が達成されている。 また Ahxを添加した最小培地にて増殖が亢進するKI723 株や,増殖が低下する KI724株など,Ahxモノマーに対する代謝能力の異なる4種の変異株が単離されている。これらの情報をもとに,モノマー代謝に関与する酵素を同定し,ナイロンを有機酸に変換して工業的に利用することも可能になりつつある。繊維産業では酵素による繊維加工が行われている。セルラーゼは綿繊維やレーヨン繊維の風合い改良剤として,プロテアーゼはウールの風合い改良剤として使用されている。一方,ナイロン繊維の加工については白色腐朽菌由来のマンガンペルオキシダーゼを用いた報告があるが,実用化には至っていない。NylCは耐熱性が高いことから,ナイロン繊維の表面改質への応用も期待される。
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