1985年にLuzanovによってスピン対称化Hartree-Fock方程式という理論展開が提案されたが、その後全く芳しい進展がなかった。申請者はこの方程式を精査し、1949年にCoulsonとFischerが提案したVB法とMO法の特徴を併せ持つする波動関数と同じであることを突き止めた。このCoulson-Fischer波動関数はWilsonによって現代VB法として発展していたが、計算方法の独自性が強く、他の研究者が簡単に利用できなかった。そこで申請者はMO法の観点から理論を見直し、既存のMO法のソフトウェアで計算可能な定式化と、水素分子の電子基底状態に関する高精度計算方法を確立した。
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