研究課題/領域番号 |
19K05627
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山野井 慶徳 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (20342636)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | CPL / 白金錯体 / 不斉ケイ素原子 / 燐光 |
研究実績の概要 |
既に申請者のグループで確立した金属触媒を用いる光学活性3級シランの合成法を応用して様々な光学活性4級シランを合成した。具体的にはキラルなホスフィン配位子で構造修飾したパラジウム触媒を用いて2級シランから2種類のヨウ化アリールを逐次的に反応させることにより光学活性4級シランを合成した。ここでは、置換基として燐光を発する白金錯体部位を不斉ケイ素原子上に導入することにより、燐光発光分子として利用した。4級化反応により3級シランと比較して水素原子よりもはるかに立体的に大きい置換基を導入できるため、ケイ素原子周りのキラリティ性が向上し、CPL特性も発現した。本手法で合成した光学活性ケイ素化合物を再結晶にて光学的に純粋(>99%ee)にした後に吸収、燐光、CD、及びCPLスペクトル測定を行った。glum値は0.01~0.001程度とそれほど高くはない。ただ、燐光分子でCPLを発現する例はそれ程多くなく、従来の蛍光性CPL分子と比較しglumは同程度である。 また、最終的には薄膜材料化を目的とするので、電気化学特性や熱分析も合わせて測定している。本分子群は熱的に安定で、250℃まで加熱しても殆ど分解しない。ここで合成した分子は白金-白金間の分子間相互作用の有無により光物性が変化する。この現象を利用して、固体状態での温度、圧力、溶媒蒸気などの弱い外部刺激によるパッキング構造とCPL特性の連動変化について調査中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
燐光由来のCPL値はそれ程高くないが発現し、結果を論文(J. Org. Chem.)に投稿した。現在はより高いCPL特性を発現する分子を設計している。
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今後の研究の推進方策 |
不斉収率を向上させることはできたので、より高いCPLを発現する分子を設計・合成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 2019年度に合成した光学活性ケイ素化合物に関して機械的刺激や溶媒蒸気の暴露で可逆的に燐光が変化することが分かった。CPLとの関連性を調査しているが、共同研究先の分光装置の不調で現在調査を中断している。 (使用計画) 2020年度までに後半までには分光装置の修理が完了する予定となっている。研究費は共同研究先とのディスカッションと論文作成の議論ための旅費やサンプル調製にかかる消耗品代と郵送代に使用する。合わせて、論文作成のための校正代金、別刷代金にも使用する。
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