研究課題
申請者のグループで確立した金属錯体触媒を用いる光学活性3級シランの合成法を応用して様々な光学活性4級シランを合成した。具体的にはキラルジオールから数工程で誘導した単座ホスフィン配位子で構造修飾したパラジウム触媒を用いて様々な不斉ケイ素原子の構築を行った。反応は0℃~-30℃付近で進行し、高収率で目的物のアリール化体を単離できた。ここでは、置換基として燐光を発する様々な金属錯体部位(具体的には白金錯体)を不斉ケイ素原子上に導入することにより、強輝度燐光分子として利用した。合成した光学活性ケイ素化合物の光学純度は最高で70%ee程度であったため、メタノールによる再結晶にて光学的に純粋(>99%ee)にした後に吸収、燐光、CD、及びCPLスペクトル測定を行った。光学純度はキラルカラムを搭載したHPLCによって決定した。これにより、(R)体、(S)体共に合成することが可能になり、円偏光発光を評価するglum値は0.01~0.001程度であった。最終的に薄膜材料化を目的とするので、電気化学特性(CV)や熱分析(TGA)も合わせて測定した。本分子群は熱的に安定で、300℃まで加熱しても殆ど分解しない。この現象を利用して、固体状態での温度、圧力、溶媒蒸気などの弱い外部刺激によりパッキング構造と発光色が変化する様子が観察された。特に結晶をすり潰した状態では吸収や発光が長波長側にシフトし、メタノール蒸気に暴露すると元の状態に変化する。その様子は粉末X線構造解析やUV、発光スペクトルによって確認した。
2: おおむね順調に進展している
CPLが発現する分子の合成に成功し、外部刺激応答性も発現してきた。現在はそのメカニズムについて調査中である。
現在、圧力と熱(または有機溶媒蒸気)で可逆に変化する分子群が見つかっており、そのメカニズムも合わせて調査中である。
(理由)合成した光学活性ケイ素化合物に関して機械的刺激や溶媒蒸気の暴露で可逆的に燐光が変化することが分かり調査している。研究室主宰教授の定年退職と異動に伴い、分光装置が東京理大に移転した。装置を学内の別所属から使用しているため、一部の実験を中断している。(使用計画)新任教授の着任に伴い、分光装置の購入が完了した。研究費は共同研究先とのディスカッションと論文作成の議論ための旅費やサンプル調製にかかる消耗品代と郵送代に使用する。合わせて、論文作成のための校正代金、別刷代金にも使用する。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
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http://www.chem.s.u-tokyo.ac.jp/users/inorg/index.html