研究課題
本研究では、金属錯体を用いた高効率な水の完全分解系の構築を目指し、これまでに開発した酸化触媒能をもつ金属錯体と還元触媒能をもつ金属錯体を混合して、金属イオンによる連結と複合化を検討した。そこで、最終年度は、還元触媒としてはたらくパラジウム(II)錯体に、これまでと異なる平面4配位構造を好む銅(II)イオンを複合化させることを検討した。ペニシラミンをもつパラジウム(II)錯体を銅(II)イオンと複合化すると、緑色の結晶が単離された。単結晶X線構造解析の結果、この結晶は、パラジウム(II)錯体に含まれるペニシラミン配位子のカルボキシ基が、銅(II)イオンに配位した3次元構造の異種金属多核錯体ポリマーであることが分かった。銅(II)イオン周りは当初の想定通り、平面4配位構造を有する一方で、連結するパラジウム(II)錯体は平面には位置せずにねじれた構造をもつ。このため、全体の構造は3次元方向に配位結合が広がり、3次元配位ポリマーを作っている。組成は、元素分析、蛍光X線分析、単結晶X線構造解析、によって決定した。この結晶を電極に担持し、これまでと同条件で、電気化学挙動を調べた。すると、負への電位掃引によって急激な電流上昇が確認された。また、この電流上昇がみられた電位より高電位側には、小さなプレピークも見られた。電流上昇と同時に、電極近傍より気泡が現れ、これをガスクロマトグラフで分析したところ、水素ガスを生じしていることが分かった。すなわち、得られた結晶は水の還元を電気化学的に触媒することが明らかになった。しかしながら、触媒に用いた結晶は当初に比べて退色していた。今後の分析が必要であるが、おそらく銅(II)架橋イオンが、銅(I)に還元されているものと考えられる。そのため、他の結晶系に比較して、安定性においては優位性を見出せなかった。
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Coordination Chemistry Reviews
巻: 474 ページ: 214857~214857
10.1016/j.ccr.2022.214857