研究課題/領域番号 |
19K06018
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
福田 文夫 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (60294443)
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研究分担者 |
河井 崇 岡山大学, 環境生命科学研究科, 助教 (90721134)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 音響振動法 / モモ / 核割れ果 / 果肉障害果 |
研究実績の概要 |
モモにおいて音響測定による非破壊判別を簡便に行えるようにするため、モモの核割れ果の判別する試験において、2点型の分析機器「聴診器」と一点型音響装置との間で、共鳴周波数などの音響データの整合性の把握を行った。果実発育中の継続的な変化を確認したところ、おおむね同様の結果となり、1点型試験機でも核割れ発生を判別でき、また果実袋上など直接果実にセンサーを接触させられない栽培状態でも共鳴周波数の取得が可能であることが明らかになった。導入したモバイル型音響装置についても調整を行い、核割れや樹上での成熟状態を把握できるように、プログラムを開発メーカーと調整し、2020年度に果実生産への利用可能性の検討ができるようにした。 また、一点型音響測定装置を用いて、モモ’白鳳’において、70果実の果実発育中に樹上で共鳴周波数の低下を調査していき、水浸状果肉障害の発生を非破壊把握する方法を検討した。果肉断面の半分程度に水浸症状を呈する水浸指数2以上の商品価値が低下する果実については、正常果と比べて、第2共鳴周波数が著しく低下することから、この閾値を550Hzに設定することで、収穫果において商品性の低い果実の混入を抑制できることが明らかになった。さらに、樹上調査において、7月初めの段階で、ほぼ同じ着果位置でも、共鳴周波数の低い果実が存在し、そのような果実の多くが収穫時に水浸症状をとなっていることが確認された。この方法を利用することで、水浸果となっていく変化が生じ始める時期や着生させている枝の状況などとの関連を検討できることが明らかとなった。これらをまとめて、令和2年度園芸学会春季大会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一点型の音響振動測定を通して、果実袋がかかった栽培方法下でも、非破壊で核割れ果や果肉障害果の判別が可能であることを示し、果樹生産上での障害果判別への利用を実現できることが示された。 2019年度に核割れ果、果肉障害果とも、障害の発生過程における変化の開始時期が明確にできたことで、2020年度以降は、その時期を重点的に調査を行い、また変化した果実をサンプリングし、破壊調査を行って、果実内部の微細構造や生理状態を把握することで、変化につながる生理過程を検討していくことができると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
核割れの判別の精度に、1点型音響装置も2点型と同様に、発育時期的変化が生じることが明らかとなったため、年次変動を確認していくとともに、判定時期を変えて、利用可能性を探る。また、2019年度に購入したモモ苗を養成し、核割れ発生前後に栽培方法を変えて、核割れの発生メカニズムを音響装置で毎日継続してモニタしながら明らかにしていく。 果肉障害の判別の試験では、7月初めの段階で既に音響データが異なった果実に焦点を当て、直後にサンプリングして、果実内部を、果肉細胞構造を含めて、確認することで発生原因の探索につなげる。 熟度の把握では、晩生品種を用いて、異なる音響データで収穫を行い、糖蓄積や硬度低下など、他の評価項目との関係を追熟後に調査していく。これらの試験を経て、品種ごとの熟度把握に関して、音響データの適正範囲を明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度に計画していた学会発表が、発表は認められたが、大会自体が中止となり、学生と共に出席するよう手配していたため、キャンセル分が生じた。また広島大学の櫻井名誉教授および開発メーカーへの成果説明や機器調整の出張も行うことができなかった。 2020年度は、県外出張が認められれば、広島大学へ出張を行い、生理障害判別の方法について提案を受けるとともに、開発メーカーで機器のチェックを受ける予定である。さらに、個体の維持に必要な資材の購入および新規音響センサーの導入に充てる予定である。
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