研究課題/領域番号 |
19K06057
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
石川 敦司 福井県立大学, 生物資源学部, 教授 (70264687)
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研究分担者 |
仲下 英雄 福井県立大学, 生物資源学部, 教授 (70280724)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 非宿主抵抗性 / 概日時計 / 組織特異性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、シロイヌナズナのイネいもち病菌に対する非宿主抵抗性を制御する ① 概日時計の組織特異性および ② 概日時計の時刻情報を表現する「出力系」について明らかにすることである。
昨年度は、葉のどの組織の概日時計がイネいもち病菌に対する侵入抵抗性を制御しているのかを明らかにするために、pen2 変異体の葉の表皮細胞において組織特異的に時計遺伝子を過剰発現する系統を作出した。葉の表皮細胞特異的プロモーターとしては、表皮特異的に発現するβ-ketoacyl-coenzyme A synthase 遺伝子ECERIFERUM6 (CER6)を用いた。CER6 プロモーターの下流に CCA1 および TOC1 をつなぎ過剰発現させた系統をそれぞれ作出し( pen2 CER6-CCA1 および pen2 CER6-TOC1 )、これら系統の葉にイネいもち病菌を接種し非宿主抵抗性について解析したところ、pen2 CER6-CCA1 系統において侵入抵抗性の顕著な低下が観察された。この結果から、シロイヌナズナのイネいもち病菌に対する非宿主抵抗性において、葉の表皮細胞の概日時計 CCA1 が正の制御因子として機能していることが示唆された。
本年度は、上記 pen2 変異体 および pen2 CER6-CCA1 系統を用いてRNAseq 解析を行った。まず pen2 変異体にイネ いもち病菌を接種し、菌接種により発現が変動する遺伝子を明らかにした。次に pen2 変異体と pen2 CER6-CCA1 系統における遺伝子発現を菌接種および未処理(コントロール)のそれぞれの条件で比較し、概日時計 CCA1 が制御していると予測される遺伝子を複数同定した。これら遺伝子には葉の表皮細胞で特異的に発現する遺伝子が含まれていた。またプロモーター領域に CCA1 結合配列を含む遺伝子も同定され、 CCA1 による直接の発現制御が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の RNAseq 解析により、シロイヌナズナのイネいもち病菌に対する非宿主抵抗性における遺伝子発現変動を初めて明らかにすることができた。
さらに、これら RNAseq 解析により、シロイヌナズナのイネいもち病菌に対する非宿主抵抗性において、概日時計 CCA1 が制御する「出力系」の候補遺伝子を複数同定することができた。
以上の結果から、到達目標通りの成果を上げることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究は順調に進展しており、今後もさらに本研究を推進させていく予定である。
来年度は、② 概日時計の時刻情報を表現する「出力系」に関わる遺伝子について明らかにしていく予定である。
そのために、さらなる RNAseq 解析を行うとともに、本年度同定した組織特異的「出力系」遺伝子の詳細な発現解析を行う予定である。これら遺伝子発現解析により、非宿主抵抗性を制御する組織特異的「出力系」遺伝子が明らかになると期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品調達の工夫等により、当初見込よりも物品費が節約できたため。 消耗品(分子生物学的実験試薬)の購入に使用予定。
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