さまざまな昆虫類において防衛行動を実験室下で観察し、特に在来カエル類(トノサマガエル等)および外来カエル(ウシガエル)に対する防衛効果を調査した。ウシガエルについては環境省の許可を経て捕獲・飼育し、実験を行った。 ゲンゴロウ類成虫が擬死行動を示すことを報告した論文がJournal of Asia-Pacific Entomology誌に掲載された。ゲンゴロウ科7属12種のうち、8種の成虫が陸上に落下すると擬死行動を示した。ゲンゴロウ類はカエル類などに攻撃された際、防御物質によりしばしば吐き出された。カエル類は動くものに反応して攻撃するため、吐き出された直後に擬死することで、再攻撃を防ぐ効果があると考えられた。 ミイデラゴミムシ成虫とキイロサシガメ成虫との擬態関係に関する論文がPeerJ誌に掲載された。両種は同所的に生息し、体色等が非常に類似している。潜在的な捕食者であるトノサマガエルに対して、ミイデラゴミムシの100%、キイロサシガメの75%の個体が防衛に成功した。両種の防衛力には差があるが、同所的に生息することで互いに利益のある擬ベイツ型擬態であることが示唆された。 ミズスマシ類のカエル類に対する防衛効果に関する論文がPeerJ誌に掲載された。ミズスマシ類は攻撃されると化学防衛物質を分泌し、一部のトノサマガエルには防衛効果があったが、ウシガエルには全く効果がなかった。つまり、外来捕食者の侵入によって、在来ミズスマシ類が負の影響を受けていることが示唆された。 カエル類と同所的に生息する昆虫類の多くの種において、対カエル防衛戦略を有することが研究期間全体を通じて判明した。カエル類は歯などで殺傷せずに獲物を丸呑みするため、被食者が体内に取り込まれた後に体外に脱出するという特殊な逃避行動が観られた。このような逃避行動は、昆虫類において様々な分類群で独立に進化してきた可能性が高い。
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