• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2020 年度 実施状況報告書

都市のハードスケープに生育する生物の多様性 調和生態学的アプローチによる基礎研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K06104
研究機関北海道教育大学

研究代表者

村上 健太郎  北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (00598386)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードハードスケープハビタット / 石垣 / 壁 / ノベル生態系 / 調和(和解)生態学 / シダ植物 / 海崖植物 / 着生シダ植物
研究実績の概要

日本国内において絶滅危惧生物が石垣を生育地としている可能性について検討するために、47都道府県のレッドデータブックにおける種ごとの生態情報の記述内容を閲覧し、絶滅危惧種のハビタットとしてどの程度、石垣が言及されているかについてチェックする文献調査を行った。その結果、絶滅危惧生物(都道府県レベルで準絶滅危惧以上に指定されている種)のうち、石垣を生育地とすると記述されている種が計153種(53目)確認された。生物群ごとに考えると、日本産トカゲ類全種のうち11.8%が石垣を生息地とする絶滅危惧種と考えられ、同様にシダ植物(7.7 %)、ヘビ類(7.4%)も、各生物群全種に対する割合が高かった。これらのことから、石垣は人工物であるにも関わらず、これらの分類群の絶滅危惧種を保全する機能があると考えられた。
これらのうち、稀少性の高いシダ植物の一種ビロードシダ(本来は岩崖や樹幹に着生する種)に着目し、硬質人工構造物による景観要素(ハードスケープ)の存在に配慮して、その植生、生育場所の環境調査を行った。その結果、本種は石垣だけでなく、コンクリート・モルタル壁にも多く生育することが明らかになった。また、それらの立地は北面~東面であることが多く、同じ壁に本種以外の着生シダも確認された。同様に種子植物においても海崖生のラセイタソウが道路際の硬質構造物(擁壁や石垣)に生育していることが野外調査の結果、明らかになった。これらのことから考えると、岩崖を本来の生育地とする植物にとって、壁や石垣は本来の生育地の代替の生育場所として機能する可能性があると考えられた。これらの種が壁や石垣に生育できる条件を調査することは、都市化による生物生息環境の劣化を軽減するための知見に活かせる可能性があると考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

学会発表については計4件の発表を行うことができたが、2021年2月~4月にかけて、研究代表者が病気のため入院したことにより、論文の執筆に遅れが出ている。2020年春季に新型コロナウィルス蔓延にともなって予定通りに野外調査が行えなかったことも影響した。ただし、2020年秋季については、ほぼ予定通りの野外調査を行うことができた。

今後の研究の推進方策

申請時は、(i)生物によるハードスケープ利用事例調査;(ii)歴史的遺産ハードスケープ調査:(iii)市街地ハードスケープ調査を並行して、三本立てでの文献・野外調査を考えていた。
(i)の調査については、ほぼ終了しており、論文化を進めるだけであるが、(ii)と(iii)については、(iii)のほうがより、ハードスケープの生物生息場所としての意義を明らかにできる可能性が高いように見える。全体に論文執筆が遅れていることも含めて考えると、(iii)に注力し、市街地において稀少種や海岸植物などの特殊環境に生育する種を対象に研究したほうが、生物多様性や生物生息環境への都市化の影響を緩和するために有効であると考えられる。よって、2021年度は「市街地ハードスケープ」を中心に、野外調査データの取得、学会発表や論文化を進めていく。

次年度使用額が生じた理由

申請者が2021年2月から4月まで病気により入院したことにより、執行できなかった(研究論文の英文校閲費として見込んでいた)。2021年度に、この論文は投稿予定であるため、残額も含めて執行できる見込みである。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 雑誌論文 (3件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] グリーンムーブメント「ノベル生態系と生態系管理」2021

    • 著者名/発表者名
      村上健太郎
    • 雑誌名

      高速道路と自動車

      巻: 64(1) ページ: 17

  • [雑誌論文] グリーンムーブメント「ノベル生態系としての石垣,石積み」2021

    • 著者名/発表者名
      村上健太郎
    • 雑誌名

      高速道路と自動車

      巻: 64(2) ページ: 6

  • [雑誌論文] グリーンムーブメント「道路沿いの硬質構造物とノベル生態系」2021

    • 著者名/発表者名
      村上健太郎
    • 雑誌名

      高速道路と自動車

      巻: 64(3) ページ: 12

  • [学会発表] 京都盆地北東部山麓の集落に残存する白川石の石積に生育するシダ植物について2020

    • 著者名/発表者名
      村上健太郎・張平星・福井亘・高林裕
    • 学会等名
      2020年度日本造園学会全国大会
  • [学会発表] 絶滅危惧種のシダ植物が石垣に生育する2020

    • 著者名/発表者名
      村上健太郎
    • 学会等名
      第51回日本緑化工学会大会
  • [学会発表] 絶滅危惧種の生育場所に石垣はどの程度寄与しているか2020

    • 著者名/発表者名
      菅原百香・長峯大虎・村上健太郎
    • 学会等名
      2020年度日本造園学会北海道支部大会
  • [学会発表] 平滑な壁が稀少な着生シダ植物の生育地になりうる2020

    • 著者名/発表者名
      村上健太郎
    • 学会等名
      第17回環境情報科学ポスターセッション
  • [備考] Reserchmap研究ブログ

    • URL

      https://researchmap.jp/murakamikentaro0000/%E7%A0%94%E7%A9%B6%E3%83%96%E3%83%AD%E3%82%B0

URL: 

公開日: 2021-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi