研究課題/領域番号 |
19K06146
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
岩永 史子 鳥取大学, 農学部, 講師 (50548683)
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研究分担者 |
芳賀 弘和 鳥取大学, 農学部, 准教授 (90432161)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 樹液流出 / 気温 / カエデ属 |
研究実績の概要 |
カエデ属樹木の初春にある樹液流出には気温変動が制御要因になると考えられている。しかし樹液流出の期間や量は、種や個体、採取年によって大きく変動する。そこで(課題1)樹液流出量の把握、(課題2)流出に関わる材内糖変化の把握、およびそれらの基礎データに基づいた(課題3)樹液流出予測の3課題を設定した。本年度は(課題1)樹液流出に関わる材内水分の水収支の把握と(課題2)同位体分析による材内糖変動の把握を行った。 (課題1)について、野外に生育するカエデ属2樹種の各3個体を伐倒し地上部含水量を推定するとともに、DBH-含水量の関係式を得た。2017年から年毎の個体あたり樹液流出総量と各個体の推定地上部含水量から冬季の水収支を検討した。その結果、樹液流出による水損失は地上部含水量に対する0.5 ~ 49.1%で、年変動や個体差が極めて大きいことが示された。 (課題2)について、圃場で育成したカエデ2種のポット苗で、冬季の材内糖蓄積の変動を13Cパルスラベリング法によって検討した。パルスラベリングは落葉前の10月下旬に行い、2か月ごとに収穫、器官毎に分け、凍結保存した後、凍結粉砕、凍結乾燥を経て同位体分析を行った。標識60日後の木部δ13Cは種によって異なり、13Cの取り込みに差があること、落葉に際して糖の消費に差があることが示唆された。野外での樹液流出期にあたる標識120日後には、いずれのカエデ種においても木部δ13Cが高くなる傾向が示され、樹液流出時期に樹体内の糖転流が活発になり、木部内糖の蓄積が多くなることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題1および課題3について、当初の予定通り、複数種の野外に生育するカエデ種の樹液流出パターンの解析を進めている。課題1について、野外に生育するカエデ個体の水利用特性について解析を進めることが出来た。課題2について、圃場ポット苗を用いた木部内糖の代謝と転流特性の把握を目的として、昨年度中に採取した分析試料の同位体比分析を修了し、データ解析を進めている。今後はこれまでの検討条件をもとにさらに解析が進むと予想している。
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今後の研究の推進方策 |
計画書に沿った進行を行っているが、昨年度に引き続きコロナウイルス感染症対策の外出自粛のため、野外調査や圃場実験の遂行に必要不可欠な物品の購入や機器使用に支障が認められた。次年度も感染症対策を優先しながら、場合によっては規模を縮小することも検討しつつ、調査を継続する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症による物流の遅れにより年度内に購入できなかった物品などが生じたため、一定額を来年度へ繰り越した。実験計画の遂行に大きな支障は生じなかった。
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