<レプチン発現の周年変化> 愛媛県斎灘で採集したイカナゴを,2021年5月から砂を敷いた水槽で自然水温日長に模した条件で飼育し,毎月サンプリングを行った.確率した測定法の感度が低かったため,肝臓でのレプチン遺伝子解析を試みた.その結果,通常の栄養状態であるイカナゴにおいては,夏眠期後半である11-12月では肝臓でのレプチンの発現がなくなった.一方,栄養状態が悪い痩せたイカナゴの肝臓ではレプチン遺伝子は11-12月も発現していた.夏眠を行うためには栄養状態が重要であることから,以上の結果は,レプチンが何らかの形で夏眠に関与している可能性が考えられた.また,11-12月は成熟期でもあることから成熟との関連性も考えられた.
<飼育水温と遊泳率およびホルモンの変化> 自然水温を模した条件で飼育した群(自然群),夏眠をしない水温である12℃の一定(一定群),上限を夏眠しない20℃まで変化させた(制限群)条件で飼育した.光条件は全て自然日長とした.6月から最大遊泳率を調べた〔実験1〕.5-12月末にかけてGSIの算出と採血を行い,血中テストステロン量を測定した〔実験2〕.その結果,〔実験1〕自然群の遊泳率は7月末から急激に低下し,8月末以降は0となった.一定群と制限群でも遊泳率は11月頃に1/2程度に減少したものの,全ての個体が潜砂を維持する時期はなかった.〔実験2〕6月から8月にかけての血中テストステロン濃度は,自然群では徐々に低下したのに対し,一定群と制限群では徐々に増加した.以上より,夏眠しない場合でもイカナゴの遊泳率は徐々に減少することから,活動量の低下は水温以外の要因によっても引き起こされることが示唆された.また,自然群において血中テストステロン量の増加と生殖腺が発達する時期は一致しないことから,テストステロンは性成熟とは別の機能も有することが示唆された.
|