研究課題/領域番号 |
19K06230
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研究機関 | 新居浜工業高等専門学校 |
研究代表者 |
喜多 晃久 新居浜工業高等専門学校, 生物応用化学科, 准教授 (00555162)
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研究分担者 |
岡村 好子 広島大学, 統合生命科学研究科(先), 教授 (80405513)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | キチン分解菌叢 / GlcNAc分解菌 / アルギン酸分解菌叢 / Mangrovibacterium |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、キチンなどの難分解バイオマスを高効率に分解することができる海洋性菌叢を構成する微生物群の役割を明らかにすることである。令和2年度は、キチン分解菌叢から、キチンの分解物であるN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)を資化することが出来る微生物の単離に成功した。本菌はグラム陰性の桿菌であり、単独でGlcNAcを資化して増殖することが出来るが、培養1カ月のΔOD660が約0.1と、増殖速度が非常に遅かった。また、本菌はキチンを単独で資化することはできなかった。このことから、今回単離した菌は、共生系によるキチン分解において、GlcNAc以降の代謝に関与している可能性が示唆された。現在は、本菌の同定を試みている。 一方、キチンを唯一の炭素源にすると、キチン分解菌叢の構成種は、海洋底泥などの付着担体表面にバイオフィルムを形成しないと菌叢が維持できないため、付着担体なしの液体培養ができない。おそらく近接場で物質のやり取りが菌叢維持に必須なのである。従って、キチン分解菌叢の機能の可視化(RHa-RCA-FISH)は、付着担体が邪魔をしてしまい、現段階では蛍光ラベルとその観察が困難であることが予想された。そこで、まずは以前の研究で有明海の海洋底泥から取得した、液体培養可能な菌叢であるアルギン酸分解菌叢を、RHa-RCA-FISH法のモデル菌叢として使用することとした。この菌叢は3属の細菌で構成されており、優占種のMangrovibacteriumは単独でアルギン酸分解能を示さなかった。しかし、ゲノム解析からアルギン酸代謝経路の遺伝子をすべて保持しており、途中経路の機能が欠損していることが示唆され、他の菌由来の中間代謝物に助けられている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展しているが、一部方針を変更して目標を達成した。 キチン分解菌叢から、GlcNAcを単独で分解することが出来るグラム陰性桿菌の単離に成功した。GlcNAcは微生物におけるキチン分解経路の重要な中間産物であるため、本単離菌が共生系によるキチン分解に関与していることが示唆された。また、H32年度(R2年度)は、FACS ソーティングによる標的微生物の分離取得と全ゲノム決定の予定であったが、キチン菌叢にRHa-RCA-FISH法を適用するためには、付着担体の立体構造が邪魔になるため、液体培養で維持可能なアルギン酸分解菌叢を使用することで、Mangrovibacteriumの全ゲノムを決定することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
キチン分解菌叢やアルギン酸分解菌叢からの微生物の単離を引き続き行うとともに、既に単離された微生物の機能解明とキャラクタリゼーションを推進する。また、アルギン酸分解菌叢をモデル菌叢として、アルギン酸分解に関与している遺伝子を発現している微生物を、RHa-RCA-FISH法によって特異的に可視化し、菌叢中の微生物の役割を明らかにしていく。アルギン酸菌叢でのRHa-RCA-FISH法の最適化ができれば、キチン菌叢への適用を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響により、2020年度前期に予定していた実験が実施できなかったため。しかし、遺伝子実験の準備は整ったため、2021年度は遺伝子実験のための試薬の購入や、DNAシーケンシングなどの委託解析、単離した微生物のキャラクタリゼーションのための解析費、論文の英文校正費などを計上している。
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