研究課題/領域番号 |
19K06235
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
大島 敏明 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (70134856)
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研究分担者 |
石川 雄樹 東京海洋大学, 学術研究院, 博士研究員 (50638004)
長阪 玲子 東京海洋大学, 学術研究院, 助教 (90444132)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | エルゴチオネイン / トランスポーター / OCTN1 / 発現遺伝子 / サケ科魚類 / ノックダウン |
研究実績の概要 |
2019年度実施項目:ニジマスにおけるエルゴチオネインの取り込みに関与するOCTN1様輸送体タンパク質の存在 ニジマスの血液,腸管,肝臓,筋組織において、OCTN1様輸送体タンパク質の発現に関与する遺伝子を確認するとともに,エルゴチオネインの体内動態との関連性を検討した.本学の水圏科学フィールド教育研究センター大泉ステーションで飼育したニジマス2年魚を供した.まず,RT-PCRによりOCTN1発現遺伝子発現の有無を確認した.GeneBankおよびNCBI/NIHのデータベース上で公開されているゼブラフィッシュの塩基/アミノ酸配列をもとに,下記のプライマーセットを設計した. ETT_F1: AGCTCTCTGACAGGTTTGGG ETT_R1: GGCACAGAATACAACCCAGGT ゼブラフィッシュの特徴的なOCTN1をBLAST検索のアミノ酸クエリシーケンスとして利用することで,RT-PCRにより増幅したcDNAの塩基配列はOncorynchus mykiss solute carrier family 22 member 5(LOC110533372)のそれと高い相同性を示したことから,エルゴチオネインのトランスポーターとして有力であることが初めて示された.さらに,ニジマスと同属のギンザケ,マスノスケ,Salmo属のタイセイヨウサケの血液,腸管,肝臓,筋組織,脾臓においても,それぞれ個別に設計したプライマーによる同様な分析により,OCTN1様輸送体タンパク質発現遺伝子を確認することができた.新たに合成した21塩基からなるsiRNAの細胞内へのトランスフェクションによるRNA干渉によりOCTN1様輸送体タンパク質発現遺伝子をノックダウンしたニジマス生殖腺細胞RTG-2において,エルゴチオネインの細胞内への取り込みが抑制されるかを確認することとし,実験を進行中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
OCTN1様輸送体タンパク質発現遺伝子をノックダウンしたニジマス生殖腺細胞RTG-2において,エルゴチオネインの細胞内への取り込みが抑制されることがほぼ確認できたので,2019年度の当初計画はほぼ順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
②エルゴチオネインの化学形に及ぼすpHの影響(2020,2021年度実施項目) ニジマス生殖腺細胞RTG-2の培養細胞を生体組織の「モデルとして,培養液からのエルゴチオネインの取り込みの及ぼすpHならびに細胞内に取り込まれた①エルゴチオネインが酸化型(チオン型)・還元型(チオール型)の存在割合,②酸化型二量体・チオール含有還元型単量体の化学形の存在割合エルゴチオネインの酸化型・還元型の化学形をUPLC-TOF/MSにより明らかにする. ③ プロトンプールとしてのエルゴチオネインの化学形とpH調整機能(2020,2021年度実施項目) 給餌によりエルゴチオネインを筋肉に取り込んだニジマスに対して,還元性化合物(の有無がエルゴチオネイン単量体-二量体間の存在比に及ぼす影響を,を明らかにする予定であるが,行動自粛の影響で給餌試験を開始できるか見込みが立っていない.給餌試験ができない場合には,上述のRTG-2培養細胞を用いるモデル試験に切り替える. なお,上記の種々の実験に先行し,エルゴチオネインの異なる化学形を分析するUPLC-TOF/MSの条件設定を行う.すでに,微生物産生エルゴチオネインの化学系を分析した実績があるので,この点は順調に進むものと考えている.
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