研究課題/領域番号 |
19K06247
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
野見山 敏雄 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20242240)
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研究分担者 |
観山 恵理子 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (00733643)
榎本 弘行 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30453369)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 契約産地 / レジリエンス / 産直 / 生協 / 自然災害 / 慣習法 |
研究実績の概要 |
自然災害からの復興と支援策を明らかにするため,産直産地と東都生協商品部から聞き取り調査を行った。農事組合法人埼玉産直センター(埼玉県深谷市)の2014年2月14~15日に発生した大雪被害からのレジリエンスについては,次の要因が大きいことが明らかになった。第1に,国,県,市町による災害復興事業,経営再建支援金などの行政から手厚い資金支援があったこと。第2に複数の取引生協の職員や産直産地の農家が倒壊したハウスの片付けや励ましなどを行ったことで,挫けそうになった埼玉産直センターの組合員農家にとって精神的な支柱となったこと。 2019年9月関東地方に上陸した台風15号は野菜産地に甚大な被害をもたらしたが,東都生協商品部は「おまかせ2~3品」1点500円という商品企画を実施した。出荷基準は緩くして,表面の傷やすれなど食味に影響がない範囲で出荷を受け入れた。野菜産地によっては台風により収穫量が減った品目もある一方で増えた品目もあり,自由に出荷できて助かったと産地の評価は高かった。また,組合員からも「災害被害に対する産地への寄付も良いけど,買い支えるという商品企画も良い。」と言う声もあった。応援セットは10回実施され,のべ3万4千人の利用があり,金額も1740万円の実績になった。 産直取引における契約方法について産地と生協の双方から聞き取り調査を行い,次のことが明らかになった。第1に自然災害や気象変動によって産直農産物の需給が変動した場合,厳密な契約を締結すると需給変動からの回復の足枷になることが多いこと。そのため,生協と産直産地の双方は多段階かつ多様な契約を結んでいること。第2に,この契約の基礎には長年にわたって構築された生協と産直産地との信頼関係があることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年台風19号による大雨によって,調査対象の農事組合法人埼玉産直センター(埼玉県深谷市)組合員の農地が浸水被害を受け,露地野菜を中心に作付面積の4割以上が被害を受けた品目もあった。そのため,同組合員農家の聞き取り調査を2020年に延期した。また,計画していた東都生協組合員へのアンケート調査は,当該生協が2020年度に予定している「組合員1万人アンケート調査」に質問項目を挿入することになりアンケート調査を延期した。 このように,初年度の研究計画は順調に進んだと言えない状況にあるが,進捗の遅れは2020年度と2021年度に挽回できるものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
東都生協組合員へのアンケート調査を実施予定である。また,昨年度実施できなかった農事組合法人埼玉産直センターの代表的組合員の聞き取り調査を計画している。そして,農事組合法人房総食料センター(千葉県匝瑳市)の機関調査と代表的組合員の聞き取り調査を計画している。 また,生協産直における契約取引が慣習法として行われているいことについて民法的解釈を行う。さらに,農業共済制度により産地の出荷リスクを低減する仕組みについても整理する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者が研究期間中に出産し,その後育児休暇を取得したため,計画していた生協組合員に対するアンケート調査が実施できなかった。また,埼玉産直センタ-の農家組合員に対する聞き取り調査を計画していたが,台風19号による大雨被害が発生して,聞き取り調査を中止にした。 2020年度は,東都生協組合員へのアンケート調査を実施予定である。また,2019年度実施できなかった農事組合法人埼玉産直センターの代表的組合員の聞き取り調査を計画している。さらに,農事組合法人房総食料センター(千葉県匝瑳市)の機関調査と代表的組合員の聞き取り調査を計画している。
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