研究課題/領域番号 |
19K06247
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
野見山 敏雄 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20242240)
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研究分担者 |
観山 恵理子 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (00733643)
榎本 弘行 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30453369)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 契約産地 / レジリエンス / 産直 / 生協 / 自然災害 / 慣習法 |
研究実績の概要 |
1.過去28年間,継続調査を行っている農事組合法人房総食料センターと東都生協との生協産直を対象に聞き取り調査を行った。明らかになった点は,次の通りである。 (1)1993年と2020年の価格決定と数量調整の方法について比較すると,両者で半年に1回協議を行い,大まかな取引数量と価格を決定しており,この方法は変わっていなかった。(2)房総食料センターのチャネル別出荷金額割合が変化しており,1992年の全出荷額に占める生協出荷の割合は82%だったが,2019年の生協出荷割合は75%に低下し,出荷先上位3つの生協は66%から50%に低下している。この間,地元食品スーパーへの出荷量を拡大するなど,出荷先の多元化に努めていること。 2.生協産直の契約に注目して,3つの生協と2つの産直産地を対象にして,①契約取引の決定プロセスと内容,②農産物の供給不安定によるリスク対応について聞き取り調査を行い,次のことが明らかになった。 (1)生協と産直産地は,契約を段階的に決定するプロセスを踏み,緻密なコミュニケーションを行い,支配従属関係がない対等な取引関係を基礎にしていること。(2)農産物供給が不安定になった場合,両者は契約内容を超えた出荷―販売対応を行い,欠品や過剰のリスクを回避して,互いに損失を軽減していること。 以上のことから,生協と産直産地は取引チャネルの多元化を進めるとともに,契約取引の実質化と高度化を過去の経験から進展させていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.初年度に行う予定だった房総食料センターの農家調査を実施した。 2.生協と産直産地の契約取引の実態については,事例は少ないが現代的な産直取引の課題を明らかに出来た。 3.webアンケートを2021年5月~6月に実施するための準備を総合調査会社および生協と話し合いを進めた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は最終年度であり,これまで実施できなかった聞き取り調査やwebアンケートを確実に実施したい。 1.埼玉産直センター組合員約10戸から聞き取り調査を行い,28年間の経営の変遷と生協産直の評価を明らかにする。 2.生協組合員を含めた消費者の応援消費に関するwebアンケートを行い,産直の意義について明らかにする。 3.房総食料センター及び埼玉産直センターと取引を行う東都生協の組合員に対して,産直産地への自然災害からの復興支援に関するwebアンケートを行う。 4.全国の一般消費者を対象とした食品購入と応援消費に関するアンケート調査を行う。 以上を通じて,産直の評価と課題を明らかにするとともに,産直の再定義を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
1.新型コロナ感染症の拡大により,産直産地が聞き取り調査に応じてくれず,調査が先延ばしになった。 2.webアンケートの調整と準備に想定以上の時間が掛かった。 以上の理由から,今年度は新型コロナ感染症が下火になった段階で産直産地の組合員農家に対する聞き取り調査を完遂するとともに,消費者に対してwebアンケートを実施する。
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