本研究は,ホームスキャンデータを用いて差の差分析による因果推論を実施し,大規模自然災害が保存性食品の需要に与えた影響を推定した.2016年に発生した熊本地震をカップ麺の需要増加をもたらす自然実験とみなし,アウトカムに影響する既知の要因をすべて調整するために重回帰モデルを通じて差の差分析を行った.分析の結果,地震発生と主な被災地の熊本県におけるカップ麺の需要との間に因果関係があること,熊本県における地震発生月の平均因果効果は地震発生翌月以降の平均因果効果より明らかに大きいこと,また地震発生翌月以降の全国的効果は,全期間にわたる減少トレンドにより半年余りで徐々に相殺されたことが明らかになった.
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