研究課題
イヌの乳腺腫瘍は、乳腺を構成する2種類の上皮細胞(腺上皮細胞、筋上皮細胞)の腫瘍細胞の増殖に加えて、腫瘍細胞の軟骨、骨などへの形質の変化、線維芽細胞などの間葉系成分も増えることが特徴である。イヌにおけるFGFRsの発現の特徴を探るため、上皮と間葉系を含めたイヌの全身組織におけるFGFRsの発現量の検討をおこなった。病理解剖に供されたイヌの各種正常組織の小片をRNA laterに浸漬し凍結保存し、残り組織はパラフォルムアルデヒドで固定した。凍結小片組織からRNA抽出をおこないcDNAを合成し、FGFR1-4発現量をイヌのFGFR1-4に対するTaqman Probeを用いたreal-time RT-PCRによって解析した。正常組織での発現は、FGFR1、2および3において脳で最も高い発現が確認され、FGFR4では、結腸と肝臓が高い値を示した。すべてのFGFRで骨格筋が著しく低値を示した。正常組織のRNA発現量の傾向は概ねヒトの組織で知られている発現と同様であることが明らかとなり、またこれによりイヌFGFRsに対するTaqman Probeが発現解析に有用であることが確認された。
3: やや遅れている
市販の抗体を複数試したが、安定した結果に結びつかず、やはり抗ヒトのFGFR抗原に対する抗体であることが影響していると考えられた。そのため、イヌFGFRを抗原とする抗体の作製を計画しているが、抗原タンパクの決定で難航している。
イヌFGFRsに対するTaqman Probeの有効性が確認されたことから、乳腺腫瘍組織と培養細胞でのRNA発現の大きな違いについての意義を探る。これには培養細胞がモノクローナル増殖であることが関連していることも予想され、組織上での個々の細胞の発現解析を実施予定である。
新型コロナ感染流行の影響が長引き、当初からの研究の遅れと、学会が長期間に渡ってオンライン開催となり出張に関わる経費がかからなかったことによる。研究期間を延長したので、今後計画よりやや遅れている発現解析のために使用予定である。
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