研究課題
動物園動物において自然繁殖が成立しない状況に対し臨床繁殖学的手法により産子を得るためには繁殖生理学的情報が不可欠である。本研究ではホッキョクグマのモデルとしてヒグマを利用し、両者において繁殖生理の一端を明らかにし、人工授精を実施することを目的とした。2021年度は妊孕性が確認されている雄および本研究期間中に成獣となった雄ホッキョクグマから繁殖期に精液を採取し、繁殖期において採取される精子数や精子運動性などが明らかとなった。ヒグマにおいては前年度までの結果からヒグマの卵巣を観察し、卵胞の発育速度から推測した日程で人工授精を行ったところ、授精日には排卵に適していると考えられる10 mmを超える卵胞が存在し、ホルモン投与による排卵誘起処置にも反応した。授精には個体を仰向けにして内視鏡を用い、二酸化炭素により視野を広げることでヒグマの複雑な子宮頸管開口部を視認することが出来、さらに子宮内までカテーテルを挿入することが出来、実際の生体においても目標であった経腟による子宮内授精が実施できた。さらにヒグマ特有の着床遅延中における妊娠診断のためのマーカー候補を検索したところ、分娩個体と非分娩個体の着床遅延期間における血中遺伝子発現に差がある可能性が示唆された。今後はどの遺伝子が具体的に変化しているのかを特定し、着床遅延中の妊娠診断法の確立を目指す。研究期間を通じて本研究ではヒグマにおける非繁殖期から繁殖期にかけての卵胞発育動態、排卵卵胞サイズ、排卵誘起法、発情様式を明らかにした。またヒグマの生殖器構造の詳細解析から経腟子宮内人工授精技術を確立した。また着床遅延中の妊娠診断の可能性について示した。
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