研究課題/領域番号 |
19K06435
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
佐藤 隆史 群馬大学, 生体調節研究所, 准教授 (70344934)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ノックインマウス / 膵ポリペプチド細胞 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、膵臓のランゲルハンス島の内分泌細胞の一部をしめる膵ポリペプチド細胞(PP細胞)の個体における役割、ならびにこの細胞における分子の機能の解明を最終的な目標とし、PP細胞特異的なCre発現マウスやレポーター発現マウスの作成を行なっている。本課題一年目の進捗状況としてそれぞれ以下のように進展している。 1. 現在まで、各種外来遺伝子CRISPR/Cas9 systemによりPP細胞に特異的発現するPpy遺伝子座へ直接ノックインしたマウスの作製の流れを確立し、誘導型のCre(Cre-ERT), GFP、DT-Aなどをそれぞれノックインしたマウスをそれぞれ作製した。これらはランゲルハンス島いずれもPP細胞に特異的な発現または効果が確認されたため、本課題の研究にも応用可能な条件を満たしており、各マウス系統の確率は成功したと考えられる。 2.上記のマウスの中の一つとして、PP細胞特異的にCre-ERTを発現するマウスとCre依存的に蛍光蛋白質を発現するマウスとの交雑個体では、タモキシフェンを投与することによりCre活性の誘導とともにPP細胞でレポーターの発現が確認された。さらにこのマウスでは、PP細胞から他の膵内分泌細胞への分化が生育段階別に解析でき、マウスの週齢により分化の度合いに差異が生じる可能性が示唆されている。 3.さらに現在はこれらの他、Cre発現マウスとの交配によりPP細胞により生体内に少なく存在する希少な細胞種の細胞株の樹立にも利用可能な汎用性の高いマウスの作製も手掛けている。 以上のように、本課題の進展に必要不可欠なマウスの作製がほぼ完了しつつあり、一年目の計画は問題なく進展している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CRISPR/Cas9 systemを用いた新たな手法により、本課題に応用可能な計4種の遺伝子導入マウスを効率よく作製し、これらはいずれもPP細胞の性状解析に応用するにツールとなりうる。また、これらのマウスの一部を用いることで、本研究課題の主目的であるPP細胞の分化可塑性を証明する上で重要な実験結果を付与できる可能性が一部明らかになっている。このように、本研究におけるマウス遺伝学的手法によるアプローチにより、PP細胞という細胞種の未知の役割を明確にするための研究がさらに進展すると期待している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究ではin vivoにおいてPP細胞自体の性状解析に重要なマウスがすでに得られており、本課題の進行に役立つ可能性が高いと考えられる。一方で、培養細胞樹立によりPP細胞を用いたin vitroの研究を今後可能にすることが望まれるため、組織から細胞株を樹立するための基盤となるマウスの作製を新たに計画しその進行を急いでいる。将来的にはin vivoとin vitroの両側面からPP細胞の機能を解析が可能になると考えている。さらに、この作製中のマウスで目的を満たすことが確認できれば、様々なCreマウスとの交雑によりPP細胞のみならず、他のいずれの細胞種にも応用できる可能性が高いためこのマウスを樹立し、その汎用性を明確にする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた動物実験の進展または必要となる匹数などに一部変更が生じ、実験動物の飼育費用と実験に必要となる消耗品費の一部を次年度に繰り越している。 これらは、今後の解析の進展により2020年度の消耗品の使用が増えると予想されるため、その際に使用する。また、作成中のマウスの繁殖が新たに必要となるため、実験動物の管理に必要となる額も増える見込みである。
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