研究実績の概要 |
脊椎動物の肝臓構築には、肝内胆管の走行が門脈に沿う”並走型”と、門脈とは独立の”独立型”がある。無顎類で並走型が出現、これは四足類に続く一方、条鰭類の進化では並走型から独立型に移行する。肝内胆管周囲のα-平滑筋アクチン(Acta2)の発現がこの形態進化に関係するという予備データを先に得ていたが、脊椎動物各種でその発現を免疫組織学的に検証したところ、胆管走行と平滑筋の発達は必ずしもカップルすることはなかった。そのため、Acta2遺伝子上流域の比較ゲノム解析と遺伝子欠失実験については行わないこととした。さらに脊椎動物の肝臓構築について解析を進め、アセチル化チューブリン免疫染色により肝内胆管上皮における繊毛の有無を探索したところ、Acta2タンパク質が胆管周囲に発達しないカライワシ類以降で繊毛が発達しないことが明らかとなった。これは透過型電子顕微鏡でも確認された。これらの結果はカライワシ類以降で胆汁輸送の仕組みが変化したことを示唆している。 脊椎動物の肝臓構築を分子レベルで説明するため、マウスで知られる肝臓構成細胞の分子マーカー(門脈内皮, Jag1, コネキシン37・40等; 類洞内皮, Stab2, Lyve1; 星細胞, p75/neurotrophin受容体)や肝内の遺伝子発現が帯状になるzonationマーカー(尿素回路酵素や接着分子等)について、マウスとゼブラフィッシュ肝臓間で比較発現解析を行った。ゼブラフィッシュの場合、第3次ゲノム重複のため各オルソログが重複して存在する場合があるが、少なくとも通常の飼育状態では、マウスでzonationが認められ分子マーカにーについて帯状分布が認められものはなかった。この結果は哺乳類と真骨類で肝臓の構築の、分子レベルでの仕組みが大きく異なることを示している。
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