研究課題/領域番号 |
19K06812
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
西野 貴子 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20264822)
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研究分担者 |
加藤 幹男 大阪府立大学, 高等教育推進機構, 教授 (30204499)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 適応 / 生態型 / 蛇紋岩 / 生物間相互作用 / 微生物 / 発芽 / AM菌 / 一般化線形モデル |
研究実績の概要 |
植物の適応について、対応する環境対象が明確な土性(土壌)適応は、特に多くの種分化の研究例がある。その中でも蛇紋岩適応においては、有害な重金属を過多に含む蛇紋岩土壌に対して、植物側の生理的作用が異なる集団が成立することで生態型に分化していく。 日本固有のサワシロギクにおいても、適応レベルの異なる蛇紋岩型集団があり、特に蛇紋岩地帯の土壌に顕著に含まれるニッケル(Ni)への耐性が集団ごとに異なることを我々はこれまで明らかにしてきた。一方、発芽時においては、植物のNi耐性だけではなく、痩果、もしくは発芽したばかりの幼個体の微生物が発芽を促進し、初期成長を付加的に促進している可能性を示唆したのが本研究である。 本研究では生態型ごとに、滅菌と非滅菌の痩果と土壌のさまざまな組み合わせで相互播種実験を行い、発芽率や幼個体の成長率について一般化線形モデルをもちいて解析を行った。その結果、蛇紋岩土壌において、蛇紋岩土壌に生育する生態型でのみ、植物側の微生物が存在するときに発芽率や成長率が倍以上に高くなり、有意差が認められた。また、湿地土壌では複雑な交互作用を示した。さらに、痩果と幼植物における微生物の分子同定を行ったところ、さまざまな分類群の菌類が同定されたが、蛇紋岩型に特有の菌類は見出せなかった。また、陸上植物のほとんどに共生するアーバスキュラー菌根菌(AM菌)の樹枝状体が幼根で観察された。植物の蛇紋岩地帯への侵入は種子散布によって生じる突発的な事象であり、植物の生理的な蛇紋岩耐性は、徐々に環境に順応するよりも、まずは既存の生理能力の活用が必須と考えられる。そのような場合、特異的な共生関係の成立よりも一般的な共生関係が効果的であり、特に植物が脆弱な発芽時において、こうした一般的な共生菌類が副次的に植物の蛇紋岩適応に寄与している可能性が考えられる。
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