研究課題/領域番号 |
19K06913
|
研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
吉田 崇将 東洋大学, 理工学部, 助教 (50525904)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 感覚統合 / カルシウムイメージング / マウス大脳皮質 / 二肢強制選択課題 / 視聴覚弁別課題 |
研究実績の概要 |
本研究では、感覚統合による効果を誘導するようなオペラント行動課題をマウスに学習させ、課題遂行中に感覚統合が生じている瞬間の大脳皮質全体にわたる神経活動を広域カルシウムイメージングすることで、機能的な感覚統合の神経メカニズムを解明することを目的とする。2019年度においては、本研究で使用するマウス用のオペラント条件付け行動課題を可能にするためのシステムを構築することを目標とした。目標は大別して2つに分けられる:①視聴覚弁別課題を実現するための多種感覚刺激装置とその制御システムの構築と評価。②頭部固定式の二肢強制選択課題システムの構築と評価。それらの目標に対して、オペラント行動課題システムの設計及び試作を行い、その評価を行う予定であったが以下の理由で計画が変更された。 1)本研究課題に係る遺伝子組換えマウスの入手計画が急遽変更になったため、遺伝子組換え動物実験計画の変更や調整を行い計画申請ならびに審査に時間を要した。 2)実験計画が承認されるまで動物を使用できなかったので、計画を変更して実験装置の設計・試作プロセスを優先して進めた。これにより,ダイレクト・ディジタル・シンセサイザーを用いた純音生成回路、IRビームセンサー回路、ソレノイドバルブ・真空ポンプ制御回路などの設計を完了し、試作プロセスを遂行した。試作システムでの動作検証は概ね良好で、実際の実験システムに組み込む回路の試作フェーズに進む準備が完了した。これらを踏まえて、今後は実際のマウスを用いたオペラント行動課題の検証や行動課題中におけるマウス大脳皮質の広域カルシウムイメージングを行っていく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度の目標①:視聴覚弁別課題を実現するための多種感覚刺激装置とその制御システムの構築と評価については、聴覚刺激のためのダイレクト・ディジタル・シンセサイザーを用いた純音生成回路とアンプおよびアテニュエータ回路、体性感覚刺激(ヒゲ刺激)のためのD/A変換回路、および視覚刺激のための刺激パターン変換インターフェイス回路の設計を行い、試作と評価を複数回行った。目標②:頭部固定式の二肢強制選択課題システムの構築と評価については、リッキング検出のためのIRビームセンサー回路および報酬吐出・罰呈示制御のためのソレノイドバルブ・真空ポンプ制御回路の設計を完了したが、試作までは遂行できなかった。また、マウスを用いたシステムの評価実験は、遺伝子組換え動物実験計画の変更や調整を行い、計画申請ならびに審査に時間を要したため、年度内に実施できなかった。完了した項目は、目標①の回路設計、試作および評価と目標②の回路設計;未完了の項目は、目標②の回路試作および評価とシステム全体の構築、そしてマウスを用いたシステムの評価である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、まず未完了の項目のうち、目標②のリッキング検出のためのIRビームセンサー回路および報酬吐出・罰呈示制御のためのソレノイドバルブ・真空ポンプ制御回路の試作および評価を行い、頭部固定式の二肢強制選択課題システムを構築する。その後、目標①で作製した多種感覚刺激装置を組み合わせて、オペラント課題システム全体の構築、ならびにその制御ソフトウェアを作成する。そしてマウスを用いたシステムの評価を行い、最適化を図る。最終的に設計した視聴覚弁別課題をマウスに学習させ、視聴覚統合が成立するかどうかを確認する。 さらに、システム構築に並行して、広域カルシウムイメージングに使用する、カルシウム感受性蛍光タンパク質を発現する遺伝子組換えマウス(Emx1-YellowCameleon2.60マウス)の作製を外部業者に委託するための準備を行う。遺伝子組換えマウスの作製には少なくとも半年は必要である。当該マウスを入手した後、広域カルシウムイメージングの再現性を確認する。次に、当該マウスが視聴覚弁別課題を学習可能か確かめる。最後に課題遂行中における大脳皮質の広域イメージングを行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では本研究で使用する遺伝子組換えマウスは理研より無償提供を受ける予定であったが、当該マウスのコロニーの維持ができなくなったため、凍結胚から個体を起こすことになった。個体の作出は外部業者に委託する必要があり、これに伴い、課題システム開発のための予算を大幅に削り、遺伝子組換えマウス作出の資金を捻出することとした。
|