研究課題
本研究課題は、ショウジョウバエの中枢神経系において侵害受容制御を行っていると予想される進化的に保存された神経ぺプチドについて、①分泌細胞の特定、②標的細胞の特定、③侵害受容制御の細胞学的メカニズムの解明、の3点を通じて、その中枢性の侵害受容調節作用メカニズムの詳細な解明を目的としている。①分泌細胞の特定に関して:本年度は新たに目的神経ぺプチド特異的なレポーター系統を入手・利用し、昨年度に欠失変異体と組織染色、レスキュー系統などを組み合わせた発現解析から得た当該神経ぺプチドの脳内発現パターンを裏付ける結果を得ることに成功した。②標的細胞の特定に関して:目的神経ぺプチドの高精度受容体レポーター系統を利用したイメージング解析で昨年度までに見出していた侵害受容制御に関わる可能性が高い神経ぺプチド受容体発現細胞(標的候補細胞)についての生体内RNAi解析をさらに実施し、複数の受容体間で侵害受容制御に関する機能様式に違いがある可能性を示唆する新しい結果を得た。③侵害受容制御の細胞学的メカニズムの解明に関して:昨年度確立した、②で見出した標的候補細胞のカルシウムイメージング実験法を活用し、目的神経ぺプチド受容体の欠失変異体ならびに標的細胞特異的な受容体のRNAiノックダウンが、標的細胞の熱応答を過敏化させることを明らかにした。この細胞レベルでの熱応答の過敏化は個体レベルでの侵害受容応答の過敏化をよく説明できる結果であり、この神経ぺプチドの中枢神経系での侵害受容制御にはこの標的細胞の活動調節が関わっていることを示唆する結果であると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
目的とする神経ぺプチドの中枢神経系での侵害受容制御機構について、分泌細胞と標的細胞の特定につながる証拠を十分に得ることができ、研究は概ね順調に進んでいるものと考えている。
本年度までに、本研究で目的としていた①分泌細胞の特定、②標的細胞の特定、③侵害受容制御の細胞学的メカニズムの解明について十分な研究データを蓄積できたと考えており、最終年度はこれらのデータの論文発表を主眼に研究を進めていく予定である。
次年度使用額は、研究代表者の異動に伴う研究体制の変化ならびに新型コロナウィルスによる社会情勢の変化によって、消耗品費や人件費、旅費などに関し不可避の変更があったため発生した。今後は上記の変化に対応するため新たに必要になった物品の購入なども含め計画の見直しを適宜行いながら、本研究の推進および成果の公表のためにより効果的に研究費の利用に努める。
すべて 2020
すべて 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)