研究課題/領域番号 |
19K07079
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
福本 泰典 千葉大学, 大学院薬学研究院, 講師 (10447310)
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研究分担者 |
中山 祐治 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (10280918)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | DNA損傷応答 / 細胞周期 / 細胞内局在 / Rad17 / 核小体 / ATR |
研究実績の概要 |
[核内移行によるRad17タンパク質分解の制御] 昨年度までの成果をFukumoto et al. J. Biol. Chem. 2021として学術誌に発表した。 [Rad17タンパク質の核小体移行とプロテアソーム依存的タンパク質分解機構との関連] Rad17のタンパク質中央部には私たちが”central basic domain” (CBD)と命名した塩基性アミノ酸に富む領域が存在する。本年度の解析でこのCBDに核小体移行シグナルが存在することを見出した。CBDとEGFPの融合タンパク質(CBD-EGFP)を培養細胞に発現させたとき、CBD-EGFP融合タンパク質は核小体に優先的に蓄積した。点変異体の作成により、CBD内の核小体移行シグナルを同定した。さらにCBD内での翻訳後修飾によって、核小体移行シグナルが制御されることを見出した。CBD-EGFP融合タンパク質の核小体への蓄積を制御する機構を探索した結果、プロテアソーム阻害によって核小体への蓄積が促進されることを見出した。全長のRad17タンパク質においてもプロテアソーム阻害によって非常に鮮明に核小体への蓄積が観察された。 [意義・重要性] 核小体は細胞全体の代謝状態などとタンパク質合成とを関連付ける細胞内小器官とされているが、近年の解析で従来考えられていたよりも幅広いストレスに応答することが知られている。以前にRad17の関連タンパク質であるRad9Bが核小体へ蓄積することが報告されているが、その生理学的意義は不明である。今回、Rad9Bに加えてRad17も核小体へよく集積することが示された。この成果は核小体による細胞ストレス応答にRad17と関連因子が関与する可能性を示唆するもので、今後の機能解析につながる重要な結果と考えている。この成果をまとめた論文は近日中に学術誌へ投稿する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R2の成果を学術誌に発表し、R3年度の成果も近日中に学術誌に投稿予定である。さらに、R4年度の計画についてもある程度の予備的な実験結果を既に得ているため。
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今後の研究の推進方策 |
[Rad17とiVERGE相互作用タンパク質との相互作用解析] これまでの解析でiVERGEと相互作用するタンパク質を見出している。in silicoにおいてiVERGEと相互作用タンパク質とのドッキングシュミレーションを行なった結果、複数のコンフォメーションが得られた。相互作用タンパク質のアミノ酸残基を置換した変異体を作成し、iVERGEと相互作用タンパク質との結合機構を明らかにする。この構造生物学的解析からRad17の機能とDNA損傷応答系の解析への展開を目指す。 [Rad17のD-boxの制御機構の解析] R3年度にRad17のN末に二つのD-boxを同定し論文発表により報告した。現在までの解析で、このD-boxの制御機構となり得る新規のメカニズムを見出している。この制御機構についてのより詳細な解析を行ない、プロテアソーム依存的タンパク質分解機構によるDNA損傷応答機構の解析として展開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
[理由] in silicoの解析なども活用し、また不要な経費を節約した。さらに研究のポイントを明確に絞った結果として次年度使用額が生じた。 [使用計画] 次年度の物品費に宛てる。またR3年度の成果をまとめた論文を近日中に学術誌に投稿予定であるため、その修正実験と掲載料に充てる。
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