研究課題
皮膚炎症の場でステロイド系抗炎症薬とは別に炎症の調節に関わる内在性分子として、本研究課題では硫酸化糖鎖の作用に着目してきた。炎症を抑制する硫酸化糖鎖を検索するとともに、硫酸化糖鎖の分解を通してその機能を制御する酵素ヘパラナーゼの炎症への関与を解析してきた。さらにヘパラナーゼの活性阻害により炎症疾患の調節が可能であるか試みてきた。本研究課題では硫酸化ヒアルロン酸の炎症抑制作用について検討を行い、2022年度には原著論文として発表するに至った。阻害をもたらす構造的基盤として、ヘパラナーゼの主要な基質認識部位であるheparin binding domain-1に対し、硫酸化ヒアルロン酸四糖はヘパリン四糖よりも強く相互作用することを示した。このドメインに隣接するLys98(ヒト)について、点変異(K98Q)を挿入した組換え体ヘパラナーゼを作製した。その結果、ヘパラナーゼ上のこの領域が、硫酸化ヒアルロン酸のみならず、基質を含む硫酸化糖鎖全般の認識に関わることを見出した。分子量・硫酸化度の最適化の可能性について検討を重ねた。二糖あたり4残基の硫酸化を受けた高硫酸化糖鎖においても、2.6残基修飾の硫酸化ヒアルロン酸と同様に強いヘパラナーゼ阻害作用を有することを見出した。硫酸化反応を研究室内で実施する基盤を築いたので、今後は多様な硫酸化頻度をもつ硫酸化ヒアルロン酸分子の炎症抑制作用を検討したい。アトピー性皮膚炎などの炎症部位で産生されるヘパラナーゼは、細胞外マトリックスの破壊、炎症性サイトカインの産生促進を促すと考えられる。組織学的検討により、皮疹部の表皮、特に基底層などにへパラナーゼの強い発現を認めていた。当年度の解析により、32例中30例で同様の染色像が認められることがわかった。角質細胞のサイトカイン産生能、バリア機能に与える影響についての検討は中途で終了した。
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PLoS One
巻: 18 ページ: e0276838
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