研究課題/領域番号 |
19K07116
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
冨田 拓郎 (沼賀拓郎) 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (60705060)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 血管新生 / 血管成熟 / 血管平滑筋 / 細胞内カルシウム伝達 / L型カルシウムチャネル |
研究実績の概要 |
血管組織の新生は生体組織形成において極めて重要な役割を担っている。組織が虚血ストレスにさらされると血管内皮細胞が既存血管から出芽し、新たな微小血管の形成が始まる。しかしながら、血管内皮細胞のみにより構成されるこれら血管は脆弱であり、機能的な血管網を形成しえない。そのため、機能的血管形成には、微小血管形成に引き続く、血管平滑筋細胞に被覆される血管成熟が重要であることが知られている。本研究は、この血管成熟の機構解明を通して、新たな循環疾患に対する創薬標的・戦略を得ることを目的とする。 本年度は、血管成熟をより明確に解析するための手法の開発および、膜電位変化に伴うカルシウムシグナル伝達変化を制御するL型カルシウムチャネル(LTCC)の血管平滑筋での新たな機能解析として研究を行った。組織虚血に伴う血管形成解析における問題点として、従来の組織切片の解析では、血管数の上昇や、血管径の拡大といった2次元的なパラメータの取得に限られることが挙げられる。しかしながら、機能的な血管網としては、血管形成がどのような空間的広がりを有しているかを3次元的に解析する必要がある。そこで、我々はROSA26遺伝子座に赤色蛍光遺伝子(TdTomato)を保持しCreリコンビナーゼ依存的に発現させるトランスジェニックマウスと、血管平滑筋の汎用マーカーであるTransgelin遺伝子のプロモータ下流にCreリコンビナーゼを発現するトランスジェニックマウスを掛け合わせ、血管平滑筋特異的に赤色蛍光タンパク質を発現するマウスを作製した。また、CRISPR/Cas9系を用いて、血管平滑筋の増殖・遊走に必要となるLTCCのチロシンリン酸化部位を変異させたノックインマウスを作製した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血管の成熟を明らかにするため、これまでは組織切片を用いた二次元的な解析を行い、成熟血管数・血管径等を解析してきた。しかしながらこの従来法では、3次元的な血管の広がりと血管成熟の継時的変化についての解像度が低い。そこで、本年度は、血管平滑筋を赤色蛍光でマーキングし、成熟血管の広がりを3次元的に解析する手法の開発に費やした。ようやくマウスが樹立できたところであり、今後このトランスジェニックマウスを用いた解析を進める。血管成熟には、血管平滑筋の増殖・遊走が重要であり、最近我々はL型電位依存性カルシウムチャネルの二つのチロシン残基が重要であることを明らかにした。そこでこのチロシン残基を破壊したノックインマウスを作製した。来年度はこれらノックインマウスにおいて血管形成に異常が無いかを解析する。
|
今後の研究の推進方策 |
組織虚血に伴う血管形成解析における問題点として、従来の組織切片の解析では、血管数の上昇や、血管径の拡大といった2次元的なパラメータの取得に限られることが挙げられる。しかしながら、機能的な血管網としては、血管形成がどのような空間的広がりを有しているかを3次元的に解析する必要がある。そこで、我々はROSA26遺伝子座に赤色蛍光遺伝子(TdTomato)を保持しCreリコンビナーゼ依存的に発現させるトランスジェニックマウスと、血管平滑筋の汎用マーカーであるTransgelin遺伝子のプロモータ下流にCreリコンビナーゼを発現するトランスジェニックマウスを掛け合わせ、血管平滑筋特異的に赤色蛍光タンパク質を発現するマウスを作製した。これらマウスを使用し、下肢虚血後に再形成される新生血管が成熟する過程の詳細を今後解析していく予定である。また、これらマウスはセルソーティングにより、これまでよりも純粋な血管平滑筋の急性単離が可能となり、組織中における遺伝子発現の網羅的解析も今後進めていく。
|