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2021 年度 実施状況報告書

ケタミンの抗うつ作用におけるセロトニン5-HT2A受容体の役割に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K07332
研究機関名城大学

研究代表者

衣斐 大祐  名城大学, 薬学部, 准教授 (40757514)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワードセロトニン作動性幻覚薬 / 精神展開薬 / セロトニン5-HT2A受容体 / 外側中隔核 / 視床下部 / GABA
研究実績の概要

最近の臨床研究からセロトニン5-HT2A受容体(5-HT2A)刺激薬のシロシビンが治療抵抗性うつ病の治療に有用であることが示された。しかし、その詳細なメカニズムは不明である。
これまでに我々は、シロシン(シロシビンの活性代謝物)やDOIなど5-HT2A刺激薬を処置したマウスの抗うつ様行動を評価するために強制水泳試験を行った。その結果、うつ様行動の指標である『無動時間』の短縮が認められたが、5-HT2A拮抗薬ボリナンセリンの前処置により拮抗された。さらに、ストレスに関わる外側中隔核(LS)における5-HT2Aをアデノ随伴ウィルス(AAV)により、ノックダウンしたところ、5-HT2A刺激薬による強制水泳試験における無動時間の短縮が認められた。またLSにおける5-HT2A陽性細胞はGABA作動性神経細胞であることが分かった。
2021年度の本研究では、逆行性神経トレーサーを用いて、LSの5-HT2A陽性GABA神経調べたところ、視床下部に神経投射していることが明らかとなった。すなわち、5-HT2A刺激薬はLSから視床下部に投射しているGABA作動性神経上の5-HT2Aを刺激することでGABA神経を活性化し、それが抗うつ作用に関わることが予想された。
マウスをより大きなマウスのいるケージで共存させることにより,社会的回避(引きこもり)や快感消失などの抑うつ関連行動を起こさせるストレスのことを「社会性敗北ストレス」という。そこで本研究では社会敗北ストレスを曝露させたマウスにシロシンを処置すると社会的回避行動がコントロールレベルまで抑制された。以上から、5-HT2A刺激薬のうつ様モデルマウスにおける異常行動を緩解させることが示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2021年度も2020年度と同様に新型コロナウィルス感染症の拡大に伴い、一時的に大学への入構に制限がかかる時期があり、マウスに慢性的に薬物を処置するような実験は一部中止となるなど、研究活動を満足に行えなかった。さらに物品の輸出入にも一部影響がみられ、海外からの試薬等の搬入が大幅に遅れるなどが続き、実験遂行は厳しいときもあったが、幸いにも進捗は「やや遅れている」程度と考える。

今後の研究の推進方策

今後は抗うつ行動におけるLSの神経活性の役割を明らかにするために、光遺伝学および化学遺伝学技術を用いてLSの5-HT2A陽性GABA神経の神経活性を人工的に活性化または抑制した際の抗うつ行動についてマウスを用いて調べる。さらに、5-HT2A刺激薬がLSのGABA神経の遺伝子発現に与える影響を調べるためにRNA-seq法を用いて、5-HT2A刺激薬処置後のLSにおける遺伝子発現を網羅的に解析する。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウィルス感染症の蔓延に伴い、大学入構が制限されたため、研究の進捗が悪く、研究費執行が一部滞った。そのような理由により次年度使用額が生
じた。使用計画としては、5-HT2A刺激薬による抗うつ作用の分子基盤を明らかにするために5-HT2A刺激薬を投与したマウスのLSにおいて網羅的な遺伝子発現を調べるためにRNA-seq法を行う。

  • 研究成果

    (21件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 学会発表 (20件) 備考 (1件)

  • [学会発表] セロトニン作動性幻覚薬の抗うつ作用に関わる脳基盤の解明2022

    • 著者名/発表者名
      衣斐大祐
    • 学会等名
      第95回 日本薬理学会年会
  • [学会発表] 父マウスへの慢性バルプロ酸投与が仔マウスのけいれん誘発薬の感受性に与える影響2022

    • 著者名/発表者名
      中齋玄紀、衣斐大祐、高羽里佳、間宮 隆吉、平松正行
    • 学会等名
      日本薬学会第142年会
  • [学会発表] プロテオーム解析を用いたケタミン投与マウスの大脳皮質及び海馬における抗うつ作用関連分子の同定2022

    • 著者名/発表者名
      近藤萌花、佐藤亮樹、高羽里佳、前田恭佑、田崎ひなの、衣斐大祐、平松正行、今西 進
    • 学会等名
      日本薬学会第142年会
  • [学会発表] β‐Amyloid peptide(25-35)脳室内投与マウスの海馬で認められるアポトーシスに対するベタインの神経保護作用について2022

    • 著者名/発表者名
      衣斐大祐、飯見凌、間宮隆吉、平松正行
    • 学会等名
      日本薬学会第142年会
  • [学会発表] 胎生期急性ニコチン曝露によるサイトカインの変動と 胎仔脳内ミクログリアの形態的特徴2022

    • 著者名/発表者名
      桑田直哉、間宮隆吉、加藤大智、竹河里帆、木股伶子、牛田真美、鈴木里麻、平松正行、衣斐大祐、鍋島俊隆
    • 学会等名
      日本薬学会第142年会
  • [学会発表] 食餌制限が学習・記憶機能に及ぼす影響2022

    • 著者名/発表者名
      小森千優、間宮隆吉、衣斐大祐、平松正行
    • 学会等名
      日本薬学会第142年会
  • [学会発表] ヘパラン硫酸生合成酵素Extl3を興奮性神経特異的に欠損させたマウスにおける認知機能と不安様行動の解析2022

    • 著者名/発表者名
      三河範花、髙羽里佳、小林素子、石崎愛弓、衣斐大祐、水本秀二、平松正行、菅原 明、山田修平
    • 学会等名
      日本薬学会第142年会
  • [学会発表] 胎生期異常免疫応答による行動および神経組織学的変化の世代間継承に関する研究2021

    • 著者名/発表者名
      中齋玄紀、衣斐大祐、宮城 凜、黒岩愛、高羽里佳、間宮隆吉、平松正行
    • 学会等名
      第139回日本薬理学会 近畿部会
  • [学会発表] セロトニン5-HT2A受容体刺激薬の抗うつ作用における外側中隔核の役割2021

    • 著者名/発表者名
      高羽里佳、衣斐大祐、中齋玄紀、渡邊香輝、阿知波瑞紀、前田恭佑、水谷健人、早川昂汰、吉田圭介、間宮隆吉、北垣伸治、平松正行
    • 学会等名
      第139回日本薬理学会 近畿部会
  • [学会発表] セロトニン5-HT2A受容体刺激薬の抗うつ作用に関わる分子メカニズムの検討2021

    • 著者名/発表者名
      阿知波瑞紀、衣斐大祐、髙羽里佳、前田恭佑、水谷健人、間宮隆吉、平松正行
    • 学会等名
      第139回日本薬理学会 近畿部会
  • [学会発表] 父マウスへのニコチン慢性曝露が仔マウスの情動行動に与える影響2021

    • 著者名/発表者名
      早川昂汰、衣斐大祐、中齋玄紀、髙羽里佳、間宮隆吉、平松正行
    • 学会等名
      第67回日本薬学会 東海支部総会・大会
  • [学会発表] 胎生期polyI:C曝露による行動異常の父子間継承に関する研究2021

    • 著者名/発表者名
      黒岩 愛、衣斐大祐、中齋玄紀、宮城 凜、間宮隆吉、平松正行
    • 学会等名
      第67回日本薬学会 東海支部総会・大会
  • [学会発表] 胎生期polyI:C曝露による神経化学的変化の父子間継承に関する研究2021

    • 著者名/発表者名
      宮城 凜、衣斐大祐、中齋玄紀、黒岩 愛、間宮隆吉、平松正行
    • 学会等名
      第67回日本薬学会 東海支部総会・大会
  • [学会発表] セロトニン5-HT2A受容体刺激薬の抗うつ作用およびその神経ネットワークの探索2021

    • 著者名/発表者名
      髙羽里佳、衣斐大祐、水谷健人、前田恭佑、阿知波瑞紀、吉田圭介、間宮隆吉、北垣伸治、平松正行
    • 学会等名
      第67回日本薬学会 東海支部総会・大会
  • [学会発表] セロトニン5-HT2A受容体刺激薬処置による外側中隔核の抗うつ作用関連分子の変化2021

    • 著者名/発表者名
      前田恭佑、衣斐大祐、高羽里佳、水谷健人、阿知波瑞紀、間宮隆吉、平松正行
    • 学会等名
      第67回日本薬学会 東海支部総会・大会
  • [学会発表] 前脳領域の興奮性神経特異的Extl3欠損マウスの作製とその行動観察2021

    • 著者名/発表者名
      石崎愛弓、小林素子、高羽里佳、衣斐大祐、水本秀二、平松正行、菅原明、山田修平
    • 学会等名
      第67回日本薬学会 東海支部総会・大会
  • [学会発表] 前脳領域の興奮性神経特異的Extl3欠損マウスの認知機能解析2021

    • 著者名/発表者名
      小林素子、石崎愛弓、髙羽里佳、衣斐大祐、水本秀二、平松正行、菅原明、山田修平
    • 学会等名
      第67回日本薬学会 東海支部総会・大会
  • [学会発表] ケタミン投与マウスの大脳皮質及び海馬における抗うつ作用関連分子の同定2021

    • 著者名/発表者名
      佐藤亮樹、高羽里佳、前田恭佑、近藤萌花、田崎ひなの、衣斐大祐、平松正行、今西 進
    • 学会等名
      第67回日本薬学会 東海支部総会・大会
  • [学会発表] 幻覚剤による外側中隔核のセロトニン5-HT2A受容体を介した抗うつ作用2021

    • 著者名/発表者名
      衣斐大祐
    • 学会等名
      第43回生物学的精神医学会・第51回日本神経精神薬理学会 合同年会
  • [学会発表] セロトニン5-HT2A受容体刺激薬の抗うつ作用における外側中隔核の役割2021

    • 著者名/発表者名
      髙羽里佳、衣斐大祐、中齋玄紀、阿知波瑞紀、前田恭介、水谷健人、早川昂汰、吉田圭介、間宮隆吉、北垣伸治、平松正行
    • 学会等名
      第43回生物学的精神医学会・第51回日本神経精神薬理学会 合同年会
  • [備考] 名城大学薬学部 薬品作用学研究室

    • URL

      http://www-yaku.meijo-u.ac.jp/kenkyu/chemical-pharmacology/

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公開日: 2022-12-28  

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