研究課題/領域番号 |
19K07337
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
岸本 泰司 帝京大学, 薬学部, 教授 (90441592)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | プラセボ反応 / マウス / 興奮性シナプス / 前頭前皮質 / NMDA受容体 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、マウスにおけるプラセボ(ノセボ)鎮痛条件づけ系を用いて、各種遺伝子改変マウスへの適応を行った。特に統合失調症のモデルマウスであるMDGA1KOマウスで観察されるプラセボおよびノセボ反応のメカニズムおよび、障害を緩和する薬物を重点的に探索した。 プラセボ反応では前頭前皮質が重要な脳領域の一つとして推定されており、ノセボ反応では海馬が重要な脳領域として推定されている (Jensen KB et al.,2015) 。また、NMDA受容体は記憶学習において重要な海馬の長期増強 (LTP) に関与することが知られているが、前頭前皮質および海馬ではNR1、NR2A、NR2BがNMDA受容体を構成している。そこで、ウェスタンブロット法により、MDGA1KO(-/-)マウスの前頭前皮質および海馬におけるNMDA受容体NR1、NR2Aサブユニットの発現量を調べた。その結果、野生型に比較してMDGA1 KOマウスでは海馬でのみ両サブユニットの発現が減少していることが明らかとなった。MDGA1 hetero(+/-)マウスでは前頭前皮質および海馬とも、NR1、NR2Aサブユニットの発現量は野生型マウスと比較して変化がなかった。一方、NMDA受容体のグリシン結合部位刺激作用を有するNMDA受容体部分アゴニストD-cycloserine (DCS)の投与は、MDGA1KOマウスのプラセボ反応に影響を与えなかったが、ノセボ反応を減弱させた。これらの結果よりプラセボ反応の機序に海馬のNMDA受容体は関与しないが、ノセボ反応には海馬のNMDA受容体が関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の所属大学移動のため、担当学生(卒業研究生)の不在や機器の継続使用に困難が続いた(例としてホットプレート装置が移管できず、新たに購入できたのが2022年度末となった)。さらに昨年度に引き続き、コロナ禍動物実験申請手続きが行えない期間が延長したため、脳損傷あるいは皮質脳波(ECoG)計測の手法による実験にも遅延が生じた。このため事業期間の延長を行った。
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今後の研究の推進方策 |
脳損傷あるいは皮質脳波(ECoG)計測の手法を組み合わせることで、プラセボ/ノセボ反応に重要なマウス脳領域を明らかにする。また腹側被蓋野の活性化(もしくは不活性化)により、プラセボ反応の増強もしくは減弱が起こるかを確認することにより、プラセボ反応における報酬系の重要性を明らかにする。平行して、入手できる遺伝子改変動物を用いて、これらの遺伝子改変マウスの条件づけを行うことで、統合フレームワーク理論の検証を引き続き行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
代表者の所属大学移動とコロナ禍による実験者の不足による。22年度にはこの状況が改善される見込みのため、必要な試薬などの消耗品および学会発表に次年度使用額を使用する。
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