研究課題
基盤研究(C)
膵癌は最も予後不良な癌の一つで、5年生存率は10%に満たない。その理由として、①早期に浸潤癌に進展するため、根治切除術の適応になる症例が少ないこと、②既存の抗癌剤が奏功する症例が少ないこと、が挙げられる。したがって、膵癌の治療成績や予後を改善するためには、癌の進展に関わる分子メカニズムを詳細に解明することが必要である。本研究では、ヒト膵癌の発症・進展時に付加される遺伝子異常を導入したヒト膵癌に近いモデルマウスを作製した。
分子病理学
本研究で作製されたヒト膵癌のゲノム異常を導入したマウスでは、ヒト膵癌と同様に膵癌前駆病変から浸潤癌への組織学的進展過程が観察される。また、転移・播種巣形成や癌悪液質の発症等についても高頻度にみられることから、膵癌の発症から癌死に至る過程を経時的に観察可能なモデルとなる。このマウスを詳細に解析することで、膵癌の早期診断法や新規治療法の開発につながる知見を得ることが可能となり、膵癌の治療成績の改善が期待される。