研究課題/領域番号 |
19K07429
|
研究機関 | 東京都立駒込病院(臨床研究室) |
研究代表者 |
元井 亨 東京都立駒込病院(臨床研究室), 病理科, 医長 (50291315)
|
研究分担者 |
山田 倫 東京都立駒込病院(臨床研究室), 病理科, その他 (90812818) [辞退]
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 微小核 / 肉腫 / cGAS / Sting |
研究実績の概要 |
【背景と目的】放射線照射が微小核(MN)形成を促進することが知られている。本年度は肉腫の放射線照射前後のMNの状態に焦点を当て、MNの状態及び検出に有用な免疫組織化学的マーカーの同定、cGAS, Stingとの関連性の解析を行った。 【方法】代表的な成人軟部肉腫である未分化多形肉腫(UPS)5例、粘液線維肉腫(MFS)2例、対照として悪性末梢神経鞘腫瘍、脱分化型脂肪肉腫、間葉性軟骨肉腫、粘液脂肪肉腫、骨外性粘液軟骨肉腫各1例を用いた。放射線照射前後の病理検体でヘマトキシリン・エオジン(HE)染色、核膜構成分子Emerin、LaminB1染色により腫瘍細胞100個中のMN陽性率を計測した。またUPS、MFSに関してEmerin、LaminB1、cGAS、Stingの発現状態を同一細胞20個の主核とMNの発現の差異に着目して解析した。 【結果】照射前の微小核陽性率の平均(HE/Emerin/LaminB1)はUPS(17/18/15)、MFS(13/9/13)、対照群(2/3/4)、照射後検体ではUPS(17/13/15)、MFS(13/18/15)、対照群(2/3/1)であった。UPS・MFSの主核とMNの比較による発現減弱細胞率の平均(Emerin/Lamin B1/cGAS)は照射前30/60/78%に照射後52/56/89%でEmerinとcGASの発現が照射後有意に低下していた。Stingは全例微小核は陰性であった。 【考察】各染色によるMN検出率は同等だがLaminB1による判定が最も容易である。一方、核膜のみでの判定精度には改善の余地がある。UPS・MFSの微小核数の多さは染色体不安定性が関係すると推測される。予想に反して照射によるMNの数的変化は無く、主核とMNの核膜の性質の違い、照射後にEmerinやcGASの発現低下が促進され、MNの質的変化が進むことが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究により、実際の腫瘍における微小核の質的な変化の重要性が病理学的検索により明らかとなった。この点は現在までに報告が殆ど無く意義深いと思われる。また肉腫の放射線照射で微小核は単純に増えるわけではなく、微小核の質的な変化が重要である点も新しい知見である。
|
今後の研究の推進方策 |
微小核の質的な変化に注目して、染色多不安定性の高い肉腫における微小核の数的、質的な異常を解析していく。また最近微小核崩壊時に小胞体から微小核に侵入するエクソヌクレアーゼTREX1がcGASの抑制的に制御することが明らかにされた(Mohr L, et al., Mol Cell 2021)ので、この点からも肉腫の微小核にアプローチし、質的変容の詳細やcGAS-Sting経路の制御機構を解析する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究の進行に伴う症例の選定の際に遺伝子解析を行う必要があるが、選定作業の一部が次年度に跨るためである。したがって次年度に使用する。
|