研究実績の概要 |
【背景と目的】cGAS-STING経路の新たな機能として微小核内のcGASが微小核のクリアランス(nucleophagy)に関与していること、核膜破裂時のDNAエキソヌクレアーゼTREX1の侵入がcGASを抑制することが最近報告された。そこで本年度は肉腫におけるcGAS-STING1経路、微小核、オートファジー機構の関係を知ることを目的とした。 【方法】昨年と同様に染色体不安定が高い未分化多形肉腫(UPS)5例、粘液線維肉腫(MFS)2例、その対照として5種類の肉腫計5例の放射線照射前後のペア検体を用いて、オートファジー関連マーカー(p62、LC3B)及びTREX1発現を免疫組織化学的に検索した。核と細胞質に分けて陽性率を3段階(0:10%未満、1+:10%以上50%未満、2+:50%以上)で評価した。 【結果】UPS/MFS(7例)のTREX1の陽性例数(0/1+/2+)は照射前:核(5/1/1), 細胞質(0/0/7), 照射後:核(5/2/0), 細胞質(0/0/7)。p62はUPS/MFSでは照射前:核(3/2/2), 細胞質(0/3/4),照射後:核(0/3/4), 細胞質(0/0/7)、LC3BはUPS/MFSでは照射前:核(6/1/0), 細胞(5/2/0),照射後:核(5/0/0), 細胞質(4/1/0)。TREX1は全例で細胞質にびまん性陽性で局在や発現の変化はなかった。p62はUPS/MFS群で照射後の発現増強傾向があった。一方、LC3B発現は一貫して微弱。 【考察】UPS/MFSの照射後のp62の核内蓄積傾向やLC3Bの発現変化の乏しさはオートファジー機構の障害を示唆する。前年度報告した照射後の微小核でのcGASの発現低下と合わせると微小核のクリアランス機構(nucleophagy)の障害が示唆される。一方、TREX1のcGAS抑制への関与は否定的である。
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