研究課題/領域番号 |
19K07595
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研究機関 | 昭和薬科大学 |
研究代表者 |
梶川 瑞穂 昭和薬科大学, 薬学部, 講師 (00464389)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ウイルス / 免疫回避 / ユビキチン / ユビキチンリガーゼ / カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス / C型レクチン |
研究実績の概要 |
免疫不全患者に重篤な腫瘍を引き起こすカポジ肉腫関連ヘルペスウイルスは、宿主の免疫力低下に加えて、自らのウイルスユビキチンリガーゼK3およびK5を発現し、宿主の免疫制御分子であるMHCクラスI分子等にユビキチン依存的エンドサイトーシスを引き起こすことにより、宿主に残存する免疫をも効果的に回避すると考えられている。これまでにウイルスユビキチンリガーゼK3およびK5の基質はMHCクラスI分子をはじめ10種類ほど発見されているが、その探索は不十分であり、未知の基質が未発見のまま残されている可能性があった。申請者は、これまでに蓄積したウイルスユビキチンリガーゼの基質特異性をもとにデータベース検索を行い、未だ報告されていない基質候補分子が複数あることを発見した。本研究では実際にそれらの候補分子をコードする遺伝子を発現するベクターを構築し、ヒト細胞にウイルスユビキチンリガーゼとともに発現させ、細胞表面からの消失の有無を調べた。その結果、複数の宿主膜タンパク質が、ウイルスユビキチンリガーゼの発現に依存して細胞表面から消失することを確認した。そのうちの1つであるC型レクチン受容体については、さらに詳細に解析を行い、ユビキチンリガーゼのリガーゼ活性依存的に細胞質尾部のリジン残基にポリユビキチンが付加され、ユビキチン依存的エンドサイトーシスにより細胞表面から消失するという、これまでに知られている基質と同様であることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度はウイルスユビキチンリガーゼの基質特異性をもとにリストアップした宿主の基質候補分子群の中から、実際にユビキチンリガーゼ依存的に細胞表面発現が消失する分子を複数見出した。特にそのうちの1つであるC型レクチン受容体については、ウイルスユビキチンリガーゼによるユビキチン化活性依存的に細胞質尾部にユビキチンが付加され、ユビキチン依存的エンドサイトーシスにより消失していることまでを確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後はユビキチンリガーゼ依存的に細胞表面から消失することを確認できたC型レクチン受容体以外の基質候補分子群について、順次ユビキチン依存的なエンドサイトーシスによるものかどうかを判断するための実験を実施する。その後、本研究で新たに認定した基質について、それらを消失させることによるカポジ肉腫関連ウイルスの免疫回避パスウェイの意義を明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験が順調に進行したことにより、当初の計画よりも少ない試行回数で十分な結果を得ることができたため。次年度使用額分は翌年度分の物品費に合算し、翌年度実施する実験研究のために使用する。
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