研究課題
基盤研究(C)
本研究期間に申請者は、転写因子BACH1が膵癌細胞のEMTを促し、より強力な転移能の発現を促すこと、およびフェロトーシスがBACH1制御下にあることを証明し、これを報告した。一方で、フェロトーシスはRAS変異癌で特に感受性を示すことが注目されつつある。本研究ではフェロトーシス制御機構を利用した癌治療戦略を考える上で、各細胞内の鉄の代謝機構の違いについてさらに研究を深める必要性を示唆する予備的知見を得た。
分子腫瘍学
膵臓癌は難治性がんの1つである。BACH1が膵臓癌の予後不良因子であり、上皮系遺伝子の発現を抑制し、転移を促進するという今回の発見と論文での報告、およびBACH1がフェロトーシス誘導剤感受性を促進するという発見と論文での報告は、新規治療標的もしくは新規治療診断判別法を開発する礎となる可能性がある。また、癌遺伝子RAS活性型変異を持つ癌は約30%にもおよぶことから、フェロトーシス誘導剤による癌治療を考えた時、今後更なる検討が必要ではあるものの、その波及効果は大きいと期待している。