研究課題
2023年度においても、レビー小体型認知症およびアルツハイマー型認知症の患者に対して経頭蓋直流電気刺激(tDCS)を実施した際の脳波データならびに各神経心理指標を測定することが困難であった。そのため、認知症患者の脳波測定を実施するにあたって少しでも侵襲の低い方法を模索する目的で、すでに保有しているパッチ式脳波計(HARU-2)を用いることを検討した。この脳波計を使用してゆくにあたりディスポーザブル電極の購入が必要であった。なお、データ保存、解析、整理目的にパーソナルコンピューター、クリアーファイル、コピー用紙を購入した。また、認知症の病態・診断・治療、認知症と合併しやすい疾患に関する知見を、本研究費を通して購入した図書ならびに参加した学会によって深めた。研究期間全体を通しての成果としては、うつ病患者10名に対してtDCSを実施すると同時に脳波を測定してtDCS施行前の脳波と定量的に比較することで、tDCSの効果の生理学的な解明を試みた。その結果、tDCS施行中においてAFz刺激により安静時と比較して前頭部の電流源密度の上昇を認め、機能性連結を求める解析では、tDCS施行中において、安静時と比較してθ帯域(4.5-7.5Hz)における右前部島、右背外側前頭前野、前帯状皮質での機能的連結の上昇を認めた。これらの結果は、tDCSがうつ病の病態に対して何らかの治療的効果をもたらす可能性を示すと考えられた。また、共同研究者の西田圭一郎らとtDCSを健常者58名への歩行マインドフルネス(歩行しながら行う瞑想法の一種)実施中に施行することによる抗不安効果と介入前の脳波との関連性を検証し、STAI-SAの改善およびその改善度と左下側頭葉・右下頭頂葉の電流密度の間の有意な関連を認め、tDCSと歩行マインドフルネスの組み合わせによる抗不安効果ならびに刺激部位以外の脳部位の関連が示された。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
精神神経学雑誌
巻: 125 ページ: 559~568
10.57369/pnj.23-080