研究課題
本研究では、深層学習と逐次近似法を組み合わせたまったく新しいCT画像再構成法を開発し、臨床応用することを目指している。本年度は、既存の逐次近似アルゴリズムに深層ニューラルネットを組み込む作業を行った。逐次近似法では、画像に対する事前情報やCTのジオメトリなどの情報を予め正則化項として組み込むことが可能である。本研究では、深層ニューラルレットを逐次近似法の正則化として導入した。具体的にはencoder-decoderを画像の生成器として、投影データとの整合性をコスト関数に課すことによって、画像の再構成を行う。ここでは、画像を更新する代わりに生成器のパラメータを更新する。この方法において特に、学習データを用いない場合は、Deep Image Priorと呼ばれる手法を画像再構成に適応したことに対応する。画像は深層ニューラルネット関数を通して生成されるので、まったく自由な画像更新は行えず、ニューラルネットの関数形による拘束を受ける。このような意味で、生成される画像は正則化されている。さらに、Discriminatorと呼ばれる畳み込みニューラルネットを導入することによって、生成された画像と高画質画像とを比較することにより、生成器はより画質の良い画像を生成する。Discriminatorは、逐次近似法のコスト関数に加えて正則化項として導入した。さらにこの方法を画像誘導放射線治療で用いられる画像の画質改善に適用し、放射線治療装置であるTomoTherapyに内蔵されたMega-voltage CTの画質改善を行った。
2: おおむね順調に進展している
本年は、逐次近似法と深層学習を組み合わせたアルゴリズムを開発する予定であったが、おおむね予定通りに完成した。逐次近似のアルゴリズムはすでにこれまでの研究で使っていたので、深層学習に特化したChainerと呼ばれるライブラリに組み込み、逐次近似と深層学習のハイブリッドな画像再構成を行えるようにした。また学習データは、東大病院にすでに大量に蓄積されており、そのデータを使うことができた。
今後は、これまで開発した深層学習と逐次近似法を組み合わせたハイブリッド画像再構成法を臨床データを使って解析する。特に放射線治療で用いられている位置照合用のCTの画質改善に応用していく。特に、東大病院で使用されているElekta Synergyに内蔵されたCone-Beam CTや、TomoTherapyに内蔵されたMVCTの画質改善に適用する。
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