研究課題/領域番号 |
19K08242
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
岸本 理和 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, QST病院 治療診断部, 課長(定常) (00312364)
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研究分担者 |
菅 幹生 千葉大学, フロンティア医工学センター, 准教授 (00294281)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | エラストグラフィ / 超音波 / MR elastography / US elastography / shear wave speed / dispersion slope / shear wave elastography |
研究実績の概要 |
ファントム実験:covid-19感染拡大により共同研究者の院内への立ち入り及び病院の診断機器の使用が禁止となったため,新たなファントム実験は実施できなかった. このためファントムに関してはこれまでのデータの解析を行った. USエラストグラフィとMRエラストグラフィとの相関の検討:USエラストグラフィではせん断弾性波伝搬速度shear wave speed(SWS),dispersion slope(DS)を測定し,MRエラストグラフィでは貯蔵弾性率(G'),損失弾性率(G")を測定した.DSは粘性を表す指標とされているが、G"やtan σ(G"/G')との相関は見られず,US・MRエラストグラフィから計算したSWSそのものとR2=0.77, 0.82と強い相関を示した.これはDSがSWSから算出されていることによると考えられるが,DSが粘性を示す根拠とはならないと考えられた. 臨床研究:covid-19によりボランティア実験も実施できなかったので,倫理審査委員会に承認された後ろ向きの臨床症例の検討を行った.DSとSWSはファントムほど強くなかったがR2 = 0.24の相関があった.また肝疾患なし群,肝細胞癌以外の悪性肝腫瘍群,肝細胞癌群で分けるとSWS・DSは両者とも後者ほど高値となり,肝機能を示す血液検査のFib4-indexとそれぞれR2=0.56, 0.27の相関があった. 学会参加:日本医学放射線学会総会でQIBA(北米放射線学会のバイオマーカー標準化委員会)の超音波委員として講演(web)を行った.また共著者としてIEEE(International Ultrasonics Symposium)において, QIBAの仕様に合った粘弾性ファントム作成とその妥当性に関する発表を行った. 論文作成:既存ファントムの経年変化に関して論文を作成, plos oneに受理された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
20年度は粘弾性を変えたファントムを複数作成し,dispersion slope(DS)とMRエラストグラフィの関係を調べることを計画していたので,そこまでは順調に進行しているが,covid-19感染拡大により共同研究者の院内への立ち入り及び病院の診断機器の使用が禁止となったため、追加で予定していた複数の周波数を用いたMRエラストグラフィの実験が実施できなかった.一方でUSエラストグラフィ臨床症例のデータは蓄積できているので,倫理審査委員会に承認された後ろ向きの臨床研究により,臨床的なDSの妥当性や意義の検討を進められた.
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今後の研究の推進方策 |
DSとMRエラストグラフィとの相関の検討:複数の周波数を用いたMRエラストグラフィを測定することで,DSと同様の数値(単位:(m/s)/kHz)をMRから算出し,相関の有無を多数のファントムで検討する.複数のモダリティで同様の数値が得られていれば,測定値としての妥当性は高いと考える. DSの再現性の確認と臨床的意義の検討:後ろ向き臨床研究でDSの再現性の確認を行い、他の臨床所見と比較し,SWSに加えてDSの測定を行う臨床的意義を検討する. MRエラストグラフィの臨床研究のための申請:covid-19感染が収まったのち、MRエラストグラフィのボランティア検査を行うための倫理審査委員会への申請を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
covid-19感染拡大により国内・国際学会がweb開催になったため旅費がかからず残高が大きくなった。今年度論文が受理されたので今後その投稿料や、次年度のボランティア研究の謝礼に使用する予定である。
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