研究実績の概要 |
これまで作成してきた超音波(US)/MR両用ファントムを改良し、安定性が高く、かつQIBA(画像バイオマーカの国際標準化委員会)の条件を満たす粘弾性ファントムが作れるようになった。本年度は粘弾性の異なるファントムを6個作成し、粘性を表すとされているDispersion slope (DS)の妥当性を、超音波の商用機で得られるUS-DSと、MRIでmotion encoding gradient (MEG) 周波数を変えて独自に求めたMR-DSを比較することで検討した。ファントムの貯蔵弾性率(G')、損失弾性率(G")、損失正接(tan δ= G"/G')とUS-DS, MR-DSの相関係数を調べたところ、以下のような結果が得られた。 MR-DSは弾性の指標であるG'とは相関がなく(R=0.01)、粘性の指標であるG"とは相関が高く(R=0.69)、粘性/弾性の指標であるtan δとも高い相関が得られ(R=0.81)、MR-DSは粘性成分を適切に表すと考えられた。その一方、US-DSは粘性の指標であるG"と相関が高かったものの(R=0.87)、弾性を表すG'とも相関が高く(R=0.92)、tan δとは負の相関となった(R=-0.22)。つまり弾性が高いものは高い値となり、純粋に粘性の評価としては使えないと考えられた。この結果を日本超音波医学会及び日本磁気共鳴医学会で共著者が発表し、今後論文化の予定である。 ボランティア研究はcovid-19感染拡大と使用予定であったMR装置で周波数の変更ができなかったことにより予定していた実験はできなかったが、今後別の機器で行うべく、倫理審査委員会に申請中である。 またこれまで粘弾性ファントムを用いて行ってきたUS/MRエラストグラフィの標準化に関して、米国サンフランシスコで行われたIEC General Meetingに招待され発表を行った。
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