研究課題/領域番号 |
19K08435
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
立石 敬介 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (20396948)
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研究分担者 |
藤原 弘明 公益財団法人朝日生命成人病研究所, その他部局等, 教授(移行) (00814500)
水野 卓 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30771050)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 膵癌 |
研究実績の概要 |
膵癌細胞株を用いた過去の研究でヒストン脱メチル化酵素KDM6Bの発現低下が癌抑制遺伝子CEBPAの発現を直接抑制し膵癌の悪性度増加に寄与することを明らかにしたが、その後の検討でKDM6B/CEBPA axis制御の異常に伴って出現する高い腫瘍形成能を有する細胞集団とその特異的な表面マーカー群を同定した。これらの知見は膵癌における幹細胞性などの悪性形質の獲得にエピゲノム制御が関与する可能性を示唆していた。一方で癌細胞も癌細胞同士や間質細胞などから構成される独自の微小環境から慢性的な刺激を受ける過程で、その外部刺激を生存・増殖に適応させ、癌細胞がaddictする特異的なエピゲノム変化を誘導している可能性がある。つまり癌幹細胞を含めてエピゲノムの多様性とその細胞群への影響を理解することが生体組織内での癌腫瘍組織の不均一性の包括的理解につながると考えられる。本研究では癌患者の臨床検体から樹立されたオルガノイドを用いて、既存の癌幹細胞マーカー、および新たに見いだした癌幹細胞マーカー候補の遺伝子発現およびその陽性細胞の分布を検討する。さらに幹細胞マーカー発現細胞をその抗体を用いたフローサイトメトリーで単離し、その細胞群を用いた生物学的解析のみならずエピゲノムのオミックス解析を行っている。本研究はエピゲノムの重要性を膵癌幹細胞マーカー陽性細胞に焦点を当て、その細胞群に重要な役割を示す細胞内シグナルおよび遺伝子発現との関連性とともに解析するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
約30例の患者由来膵癌オルガノイド培養系を樹立した。生物学的アッセイのみならずフローサイトメトリーによる幹細胞分画単離を行っている。さらにはRNAシークエンスによる発現解析、エクソーム解析、エピゲノムプロファイルの解析を行っている。この幹細胞群が免疫不全マウスへの移植にて腫瘍形成するかどうか、特有の増殖能や増殖因子依存性をもつかどうかの評価、膵癌標準治療薬Gemcitabine、5-FU、CPT11、Platinum系薬剤に対する感受性の評価、細胞内シグナルの活性化/抑制による細胞群への影響評価について検討を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
幹細胞マーカー発現・非発現クラスター間での発現プロファイルの違いに最も寄与する転写因子群の候補をGSEA解析などから推定する。その転写因子の標的遺伝子への結合レベルの違いや共存するヒストン修飾をクロマチン免疫沈降で検討することにより、エピゲノムプロファイルとの関連性を検討する。同定された幹細胞マーカー発現・非発現細胞が、実際のヒト組織サンプルにおいて存在するか、とすればその分布に特異的なパターンが存在するかなどについて、マーカー分子の抗体による免疫染色にて評価するこれによりオルガノイド微少細胞解析で得られた知見を実際のヒト組織でvalidationする。
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