研究課題
気管支喘息(以下、喘息)には、気道炎症の観点からみて好酸球優位型、好中球優位型、顆粒球寡少型、混合型のフェノタイプに分類されることが分かっている.我々は、これまで喀痰及び血清硫化水素(hydrogen sulfide:H2S)濃度が健常者と比べて気管支喘息患者で上昇しており、中でも喀痰H2S濃度は喀痰好中球割合や気流閉塞(一秒量:FEV1)と関連があることを明らかにしてきた.これをふまえて我々は、より簡便な呼気を用いたH2S濃度測定法であるリアルタイム呼気中硫化水素(FeH2S)濃度測定装置を新たに開発し(2018年度に国内特許取得)、それを用いて健常者および喘息患者のFeH2S濃度を測定した.対象は健常者11名、喘息患者46名である.エントリー時の解析結果として、喘息患者におけるFeH2S濃度は健常者と比べて有意に高値を示した.更に喀痰炎症分画との関連では、好酸球優位型喘息に比べて好中球優位型、混合型喘息患者でFeH2S濃度が有意に高値であった.更に、喘息関連指標との関係について検討したところ、FeH2S濃度は、喀痰好中球割合と有意な正の相関を、喘息コントロール質問票(ACT)とは負の相関傾向を、6か月間の一秒量(FEV1)の経時的変化とは有意な負の相関を認めた.即ち、FeH2S濃度は好中球優位型喘息の指標として喘息症状や短期的な呼吸機能低下と関連があることが示唆された.今後も引き続き新規喘息患者のリクルートおよび2年後、3年後の喘息症状、経年的呼吸機能低下、増悪頻度との関連について検討していく予定である.
4: 遅れている
本研究は、現在2年目である.研究計画書では、2019年6月から12月までに100名の喘息患者を対象にリアルタイムFeH2S濃度測定、呼気一酸化窒素(FeNO)濃度測定、呼吸機能検査、血液検査、喀痰炎症細胞分画検査、喘息質問票(ACT/ACQ)を行う予定であったが、期間内のエントリー患者は約半数程度であったため、エントリー期間を延長して症例登録を行う予定とした.しかし、2020年2月から予期せぬ測定器の異常が発生し、安定したFeH2S濃度の測定ができなくなった.原因検索のため、センサー交換をはじめ様々な調整・メンテナンスを行ったが安定したFeH2S濃度の測定にまでは至っていない.原因の一つとして、センサー流入および流出口の圧・流量の調整が必要であることが分かったため、現在調整をしているところである.今後、安定した呼気FeH2S濃度の測定ができれば、健常者数名でValidationを行ったのち、新規患者のエントリーを再開したいと考えている.また、すでにエントリーが完了し、外来で加療を継続している喘息患者に関しても、経時的なFeH2S濃度の測定に加えて上述の諸検査を定期的に行い、3年間のフォローアップする予定である.
上述のごとく、できるだけ早急に安定したFeH2S濃度の測定ができるように測定器のメンテナンスを行う.その後、目標症例数である喘息患者100名を目指して新規喘息患者のリクルートを行うとともに、すでに登録した患者については引き続き3年間のフォローアップを行う予定である.
【理由】①コロナパンデミックにより国際学会出席ができなかった.②FeH2S濃度測定機器の異常が発生し、実際の測定ができず、測定器機のメンテナンスに時間を要しているため.③コロナパンデミックによる感染リスクを避けるための呼気ガス分析検査の制限のため.【使用計画】次年度の物品購入および旅費に充てる予定である.
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 1件、 招待講演 11件)
The Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice
巻: 8 ページ: 654~661
10.1016/j.jaip.2019.08.053
Journal of Thoracic Disease
巻: 12 ページ: 522~537
10.21037/jtd.2020.01.02
Internal Medicine
巻: 59 ページ: 2559~2563
10.2169/internalmedicine.4710-20
日本サルコイドーシス/肉芽腫性 疾患学会雑誌
巻: 40 ページ: 29~34
Progress in Medicine
巻: 40 ページ: 343~348
アレルギーの臨床.
巻: 40 ページ: 541~544
アレルギー
巻: 69 ページ: 989~990
日本内科学会雑誌
巻: 109 ページ: 2116~2123