研究課題
2020年度は呼気硫化水素濃度(FeH2S)測定器の故障や新型コロナウィルスパンデミックにより研究の遅れが生じたため、健常者11名、喘息患者46名に対する登録時の中間解析を行った.その結果、FeH2Sは喀痰好中球と正の相関を、短期的呼吸機能低下(半年間)と負の相関を認めたことから、好中球優位型喘息の経時的な肺機能低下を予測する指標となる可能性が示唆された.2021年度も新型コロナウィルスパンデミックが持続し、研究遂行に支障をきたしているが、なんとか喘息患者86名まで登録することができた.現時点での追加解析結果としては、2020年度の結果と同様、喘息患者におけるFeH2S濃度は健常者と比べて有意に高値であり、特に好中球優位型、混合型喘息患者で有意に高値を示した.また、FeH2S濃度は、喀痰好中球割合と有意な正の相関を、喀痰好酸球割合とは有意な負の相関を示した.更に、呼気一酸化窒素濃度(FeNO)とFeH2S濃度と喘息患者背景の特徴についても検討したところ、経口ステロイド薬投与の有無については、投与必要群は投与必要なし群と比べてFeNOが有意に高値であったのに対し、FeH2Sは両群間で有意な差を認めなかった.一方、登録前1年間の増悪に関しては、増悪あり群の方が増悪なし群に比べてFeH2Sが有意に高値であったが、FeNOは両群間で差を認めなかった.更に、喘息コントロールの有無についても検討したところ、コントロール不良群では良好群に比べて有意なFeH2Sの上昇を認めたが、FeNOに関しては両群間で差を認めなかった.以上の結果から、FeH2Sは喘息コントロール状態の把握や増悪予測の指標として利用できる可能性が示唆された.今後も引き続き新規喘息患者のリクルートおよび登録患者のフローアップを行っていく予定である.
4: 遅れている
本研究は、現在3年目である.研究計画書では、2019年6月から12月までに100名の喘息患者を対象にリアルタイムFeH2S測定、呼気一酸化窒素濃度(FeNO)測定、呼吸機能検査、血液検査、喀痰炎症細胞分画検査、喘息質問票(ACT/ACQ)を行う予定であった.しかし、2020年2月にFeH2S測定器が故障し、更に新型コロナウィルスのパンデミックにより、本研究のメインテーマである呼気ガス分析は感染リスクを伴うことから、患者登録が殆ど進まない状況で、研究に大幅な遅れが生じてしまっている.現在、患者登録期間を延長して症例集積を行っているところである.今年度内に目標の100名の登録を済ませるとともに、すでに登録した患者に対しては、引き続きFeH2S測定に加え、上述の喘息管理のための検査を行い、定期的にフォローアップしていく予定である.
上述のごとく、目標症例数である喘息患者100名の登録を目指し、新規喘息患者のリクルートを継続して行うとともに、すでに登録した喘息患者については、定期的なフォローアップによる喘息管理指標としての検査も行う予定である.しかし、登録患者全員を研究期間内に3年間フォローアップすることは困難であり、1年間のフォローアップによる解析結果を最終的な結果として提示する予定である.
【理由】①新型コロナウィルスパンデミックにより、感染リスクが高い呼気ガス分析検査が制限され、研究計画に大幅な遅れが生じたため.②新型コロナウィルスコロナパンデミックにより国際学会への出席ができなかったため.③FeH2S測定器の故障による機器メンテナンスに時間を要しているため.【使用計画】次年度の物品購入(消耗品)および旅費に充てる予定である.
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